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ヴァレリー・ディミトロフ「空手は国籍、体格、技術に関係なく、すべての人間にチャンスを与えます」

2015.10.20
大会情報


 塚本徳臣、ドナタス・イムブラス、ローマン・ネステレンコなど、一時代を築いた男たちが試合場を去る中、33歳を迎え、円熟味を増した組手でなおも世界のトップを走り続ける男、ヴァレリー・ディミトロフ。長年、フルコンタクト空手界をリードする彼は、どんな空手人生を歩んできたのか。
 かつてヴァレリーの祖国であるブルガリアを、日本人で初めて空手の指導に訪れたのが、緑健児代表だった。体の線は細かったものの、参加者の中で「光るものを感じた」若者こそが、誰あろうヴァレリーだった。それから間もない2001年の全ヨーロッパ大会。のちに通算13回優勝、うち11連覇という不滅の大記録を打ち立てることになるこの大会の中量級で、19歳のヴァレリーは記念すべき初優勝を飾っている。
 そして迎えた2003年の第8回世界大会。初出場となった最高峰の舞台で、ヴァレリーの名は一躍、世界中に知れ渡ることとなる。準々決勝で当時、絶対的な強さを誇っていた塚本から合わせ一本勝ちを収め、歴史的なアップセットをやってのけた。以降「友人であり先生」と語る塚本のテクニックを吸収することで、ヴァレリーはさらなる成長を遂げていった。
 その後も、第9回世界大会3位、カラテワールドカップ3度制覇などの輝かしい実績を残し、その姿はいつしか〝神童〟と呼ばれるようになる。また、彼が多用する下段カカト蹴りは「ヴァレリーキック」と名づけられ、技術面でも世界中に大きな影響を与えた。
 しかし、彼がただ強いだけ、あるいは技術に秀でているだけの選手であれば 「いち強豪外国人」に過ぎなかったのかもしれない。特別な存在たらしめているのは、ヴァレリーを語る上で欠かすことのできない「心」の部分にある。
「立派な心構えがなければ、たとえ勝っても喜べません。人として自分を向上させることと、空手を通して他の人と自分を理解することが目標」と語るように、ともすれば、日本人以上に武道精神を理解し、探究し、今なお謙虚な姿勢で吸収し続けている。
 第11回世界大会のテーマとして「多くの機会、知識、経験をくれる空手への感謝」を挙げたヴァレリー。若手の台頭が著しい状況に加え、心を重視するその姿勢は、37歳で第10回大会を制した時の塚本と重なる部分がある。ヴァレリーが今なお最強たるゆえん。それは、空手を通じて身につけた、心・技・体すべての充実にある。


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(CAP 写真1)
当時19歳。全ヨーロッパ大会を視察した緑健児代表の勧めで来日し、福岡支部で空手修行を積みながら大会にも出場した。表情にはまだあどけなさが残る。

(CAP 写真2)
7月の奄美大会に出場し、森健太、徳田則一を破って優勝。類まれな強さは当時から健在だった。

(CAP 写真3)
奄美夏合宿にも参加したヴァレリー(右端)。この後、9月に行なわれた福岡県大会も制した

(CAP 写真4)
初出場となった第8回世界大会では、4位に入賞した。

(CAP 写真5)
のちに終生のライバルとなる塚本徳臣と準々決勝で激突。中段突きで合わせ一本を奪い、衝撃の世界大会デビューを飾った

(CAP 写真6,7)
大阪で行なわれた第3回カラテワールドカップでは、中量級の決勝でアレクセイ・レオノフを破り、23歳で世界の頂点に立った

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(CAP 写真8,9)
7月に来日し、千葉松戸道場、世田谷塚本道場(当時)で稽古を行なった。

(CAP 写真10)
祖国・ブルガリアの道場。試割りの稽古を行なう。

(CAP 写真11)
砂袋を蹴ってスネを強化する

(CAP 写真12)
優勝候補の一角として臨んだ第9回世界大会では、自己最高となる3位入賞をはたした。

(CAP 写真13)
世界大会後も約1ヵ月間日本に滞在し、総本部道場での稽古に励んだ

(CAP 写真14,15)
第4回ワールドカップは重量級に出場。決勝で塚本を破り、第3回の中量級に続いて2階級制覇を達成した

(CAP 写真16)
第10回世界大会は、五回戦で島本雄二に敗北。試割り判定1枚差という僅差の決着だった

(CAP 写真17)
第5回ワールドカップでは、重量級の決勝でルーカス・クビリウスを破り、通算3度目の優勝を飾った。

(CAP 写真18)
師と仰ぐ緑代表と握手を交わす


――第10回世界大会から4年、第11回大会が近づいてきました。大会に向けての目標やモチベーションを教えてください。
「世界大会は空手界最高峰のイベントなので、出場できるのはいつも光栄でうれしいです。目標はリラックスした状態で楽しんでベストを尽くすことです」

――前回大会は塚本徳臣支部長が優勝しましたが、どんな思いで見ていましたか。
「7試合中、5試合を一本、または技有りで勝利したすばらしい活躍に、とても感動しました」

――塚本支部長やドナタス・イムブラス選手が引退しましたが、彼らはどんな存在でしたか。
「私にとって彼らは友人であると同時に、先生でもあります。また、ふたりの若い世代への知識や経験の継承もすばらしいと思います」

――現役でヴァレリー選手よりも上、もしくは同世代の選手は少なくなってきています。
「空手は若対老、軽対重と、さまざまなテストを行なうチャンスを与えてくれます。これも空手という芸術の魔法のひとつです」

――たしかに、それらの要素は空手ならではと言えますね。前回大会で対戦した島本雄二選手は、日本のエースに成長しました。
「彼はとても強いので、優勝候補のひとりなのは間違いないと思います」

――島本選手をはじめ、日本は20代前半から中盤の新世代が中心となりつつあります。彼らの台頭をどう見ていますか。
「日本代表チームはとても強いです。最高の指導者たちと若い才能のすばらしい融合とも言える、ユース・ジャパンプロジェクトの長年の努力と、成功の結果だと思います」

――日本人で意識している選手はいますか。
「日本代表チームの全員が才能に溢れていて、モチベーションも高いです」

――今年4月にポーランドで行なわれた『全ヨーロッパ大会2015』では、優勝をはたしました。大会の感想をお願いします。
「とてもスムーズに運営されていて、観客も多かったです」

――普段の軽重量級ではなく、重量級に出場しましたね。
「世界大会へ向けた準備の一部です」

――決勝ではマシエ・マズール選手と激闘になりましたが、マズール選手の印象を教えてください。
「彼は本物の『あきらめない心』を持っています」

――全ヨーロッパ大会ではリトアニアをはじめ、若手選手が成長している印象を受けました。ヴァレリー選手の記憶に残っている若手選手はいましたか。
「リトアニア、ジョージア、ポーランド、そしてブルガリアにも、将来有望な選手がいます」

――そんな中、大会では11連覇という大記録を達成しました。30歳を過ぎても衰えない強さの秘密はどこにありますか。
「私は自分のしていることが楽しくて大好きです。同じように、私のしていることを楽しい、大好きだと言ってくれる人もいます」

――「楽しい」「大好き」という気持ちが、強さの要因のひとつだと。現在は、どのような稽古をどのくらいの時間行なっていますか。
「パワー、スタミナ、テクニックなどの要素を考慮した稽古を、週に10回行なっています」

――稽古中だけではなく、日々の生活の中での「気づき」には、どのようなものがありますか。
「現在の武道の世界では、すばらしい選手は多いですが、すばらしい人間はあまり多くいません。何かのトップであることには責任がついてきます。そういう人は、周囲のすべてのものに敬意を示さなければいけないと思います。つまり、道場や大会会場だけではなく、毎日の生活の中でもその武道の代表者なのです。ほとんどの人間は『どのように突く、蹴る』よりも、その人の態度や行動を評価します」

――選手としてだけではなく、人間としても一流でなければいけないということですね。ヴァレリー選手にとって、世界チャンピオンとはどういうものですか。
「世界チャンピオンは影響力のある、見習うべき人間です」

――世界大会に優勝候補筆頭という立場で臨むことを、どう感じていますか。
「世界大会という大きな舞台で、国を代表して出場するのはとても光栄なことで、高いモチベーションにもなるので、すべての選手に優勝のチャンスがあると思います」

――謙虚ですね。第11回世界大会でのテーマは何ですか。
「多くの機会、知識、経験をくれる空手への感謝です」

――塚本支部長が、なぜ優勝したいのか、優勝したあとにどうしたいのかという明確な「道」がなければ、世界大会で優勝することはできないとおっしゃっていました。ヴァレリー選手の道を教えてください。
「私が成功した場合、多くの人に希望を与えられると思います。私は日本人ではなく、一番重い、一番速い、一番テクニックのある選手でもなく、ただの普通の人だからです。空手は国籍、体格、技術に関係なく、すべての人間にチャンスを与えます。だからこそ人気があって、オリンピック種目へという支持もあるのです」

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