6月28日~30日の三日間に渡り、第12回全世界大会日本代表強化合宿が鹿児島アリーナで開催されている。男子キャプテンの島本雄二、女子キャプテンの南原朱里を中心に、男女23名(岡﨑陽孝は病欠)の日本代表が集結し、『伝統継承』『王座奪還』を合言葉に過酷な稽古に取り組んだ。結団式、稽古、ナイトミーティングが行なわれた初日の模様をお届けする。
大雨と台風の影響が心配された合宿初日だが、大きな遅延や飛行機の欠航もなく、無事に日本代表が合宿地へ集合した。
結団式では緑健児代表が、「今回の合宿では日本代表選手団の自覚と誇りを持ち、仲間との絆を強めることが大きな目的です。私が優勝した第5回世界大会では、直前になって大山倍達総裁がわざわざ奄美まで来ていただき、激励をしてくださいました。すぐに負ければ総裁の顔に泥を塗ることになりますので、プレッシャーで夜中に目を覚ますこともありましたが、優勝して握手する姿を思い浮かべて、寝るようにしていました。そして、世界で誰よりも稽古で追い込み、本番に臨みました。第12回世界大会はベスト8に入ればいいと思っていたら、絶対に勝てません。ぜひ全員が世界チャンピオンになるという気持ちで、世界大会に臨んでください」と叱咤激励した。
続いて第9回世界チャンピオンの塚越孝行コーチが、「自分も世界を獲れた時は、世界一の稽古をやりました。準決勝では自分しか日本人は残っていませんでしたが、今まで日本代表が守ってきた王座をここで流出するわけにはいかないと思って臨みました。また塚本(徳臣)師範、鈴木(国博)師範から『お前ならできるよ。がんばって』と声をかけていただき、選手生命のすべてをかける決意と覚悟ができました。今回の世界大会は、島本(雄二)チャンピオンがいるからと頼るのではなく、みんなが日本の王座死守、王座奪還ができるように自覚してがんばってください」とコメントした。
第6・10回世界チャンピオンの塚本徳臣コーチは、「自分も世界大会前は、世界一の稽古をした自信がありました。生活している時も、心の曇りを取り除く稽古をしました。師範から厳しいことを言われた時、昔はわからなかったこともありましたが、次第にありがたいという感謝の気持ちを持てるようになりました。そうしたことに感謝を持ち、気づけるようになると、これ以上、稽古をしていいのか自問自答し、ケガを回避することもあると思います。世界一の稽古はもちろんですが、心の稽古も必ずやってください。全員が世界一の稽古をやって、心の稽古もしていれば、男女ともにベスト8を独占できると思います」と気合いを入れた。
最後に第10回世界チャンピオンの将口恵美は「世界大会の2年前、ロシアで開催された全世界ウエイト制でマルガリータ(・キウプリート)選手に負けたことが、私を強くしてくれました。悔しい思いとともに、代表選手の責任の重さに気づき、マルガリータ選手に勝つことしか考えていませんでした。彼女に勝てば、他の選手にも負けないと思っていたからです。そして、すべての稽古をやり切ったという気持ちから、緊張や怖さはなく、ワクワクして闘えたことを覚えています。世界一の稽古をすれば自信になりますので、大会当日、やり残した気持ちがないように過ごしてください」と期待をこめて語った。
稽古開始の開会太鼓を担当した奥村幸一監督は、「15年前にユース・ジャパンをつくりましたが、今回の日本代表は初めてユース(出身・現役)選手のみとなりました。男女ダブル優勝を目指して、心して臨んでください」と声をかけて、稽古が始まった。
緑代表の合図で基本稽古からスタート。全員が全力で取り組むのは当然のことながら、気合いが会場に響き渡った。そして、すぐに組手稽古が始まる。試合や日々の稽古でケガを負っている選手もいたため、負傷箇所以外は全力で叩き合った。10分間の休憩後、次はビッグミット打ちに移行。3分、2分、2分、2分をワンセットに、全力で出し切った。ビッグミットが終わると、小林功副代表が審判委員長としての立場から、試合で勝つためのポイントと注意点の指導があった。さらに稽古は続き、最後は制限時間一杯まで激しい組手稽古が延々と行なわれた。
ナイトミーティングでは、奥村監督から第2回世界大会前に語られた大山総裁の空手家としての心得が紹介され、世界大会前に三好一男副代表がニューヨークで一ヵ月間、出稽古をしてミットを枕に道場で寝泊まりしていた苦労話が語られた。ミーティング後半では海外強豪選手の分析が男女分かれて行なわれ、二日目の稽古の注意点を確認し合い初日が終了した。