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福井中央支部 八幡久美子 初段昇段レポート(2021年12月19日)

2022.02.24
昇段レポート

「黒帯取ったら何にでもなれるよ。」
先輩は何度もそう言いました。

私はこれまで平穏な日々を送っていました。
適度に運動もしていたし。特に何かになる気もありませんでした。
が、先輩から有意義で充実した人生を送る為にも是非空手を習うといいとの強い勧めを受け、見学だけしてみようと思いました。

昔、武道に少し携わったこともあったので抵抗はありませんでした。
只、今から飛び込むには若くはないので躊躇しました。
問い合わせの電話をすると師範は「誰でも何歳からでもできるから大丈夫。」と、一瞬にして不安な気持ちを取り除いてくれました。

体験は学び多くて楽しかった事を覚えています。
そして何だか先輩の言葉が本当の事のような気がしました。
それで、「入門させていただきたいですが、黒帯を取りたいので私が辞めると言いだしても辞めさせないでください。」と師範にお願いしました。
入門を即決した事は自分でも驚きでした。
 
稽古は毎回充実していて楽しかったのですが、私はいつも学びを得て上手くなりたいと思っていました。
自分に不足している沢山のものを少しでも身に付けて自信に変えたかったからです。
そして組手を躊躇する私に師範は「女性でも黒帯を目指せる様に考えていくから安心しろ。」と約束してくださいました。

帯の色が変わるにつれて型の難易度も上がり求められる動きも難しくなっていきました。
それと同時に黒帯がとても遠い存在に感じて、いつしか黒帯を目指していると言えなくなっていました。
 
6年が経過した頃、「そろそろ次を目指してみるか。」と、師範から昇段審査へのお許しをいただきました。
念願の『何にでもなれる黒帯』に近づけたと思うと高揚すると同時に身の引き締まる思がしました。

が、それは一瞬でした。
「黒帯の居る場所で稽古した方がいい。」と、師範の勧めで私は何度か福井県での稽古に参加させていただきました。
そこで黒帯の方が普通に出来る事が全く出来ず、しかも眩暈、吐き気、過呼吸を起こし稽古に参加できなくなり泣きながら金沢に帰る事もありました。
自分の未熟さを嫌という程、思い知らされました。

「これをやってもらう。」
師範は組手の代わりにと演武の載った古い一冊の本を貸してくださいました。
それは古い数枚の写真と漢文のような難解な文章が載っている本でした。

それを読み解いて動きに変える。
これが組手に代わる課題でした。
その文面は読む度に違う解釈に感じ取れ私はいつも混乱していました。

何が正解なのか全く分からず、師範以外は誰も知らず頼れず、私は孤独で何も見えずにひたすら自分と向き合うしかありませんでした。
それでも自分なりの解釈をして動きに変えてみる。
それを稽古で師範に確認していただく。

「違う。」「そうじゃない。」
積み上げたものが崩れ、また積み上げても壊れて、ずっとこの繰り返しでした。
黒帯への道は棘の道の様で私は心も体もボロボロで何も信じられなくなっていきました。
もちろん自分の事も信じられる訳もなく。

稀にとても小さな気づきを見つけ、師範に同調していただいた時は低い一段を積み上げられたようでとても嬉しかったです。
それは小さな確信に繋がり前に進める気がしました。

今思えば師範は受身だった私に演武を通して、自分で進んで何かを見つけていく事の大切さを教えてくださっていたのだと思います。
自分で気づいていく事が成長に繋がっていくとは分かっていても、もう精神状態は限界でした。

私は何の調整も出来ないまま昇段審査当日を迎える事になりました。
今迄やってきた事を存分に発揮してとか自分を信じてなんて出来る訳もなく、移動も型も普段通りにはいかず、明らかにいつもと調子が違っているのが自分でもよく分かりました。

それでもこの日最後の演武だけは大勢の人に見てもらいたいと思いました。
来る日も来る日もこの演武の事を考えてきました。
次に繋がるようにひとつひとつの動きを大切に演武したいと思いました。
それが今迄支えてくださった方々へ私が唯一出来る事のように思えたからです。

そして全ての審査が終了し、師範から「合格」の言葉を頂きました。
大勢の方々の笑顔と拍手が見えました。
ずっと孤独だと思っていましたが昇段審査の後に大勢の人に私は支えられていたのだと気付かされました。
ずっと自分の事だけを考えてきた1年間でした。

それでも此度の昇段審査に向けて師範は私を辛抱強く見守り導いてくださいました。
また、沢山の道場生の皆様に御指導、御協力をいただきました。そして家族にも支えてもらいました。

沢山の方々のおかげで私は1年を乗り越えられたのだと思っています。
心からお礼申し上げます。
 
有難うございました。

感謝の気持ちと共に、もう自分を追い詰めなくて済む事にホッとしました。
が、自分の失敗を思い返し備わってない部分が沢山あることを感じ、重々しい気持ちになりました。

現実はしっかり受け止めて、今後も自分に不足している部分を補うべく精進し、帯の色に相応しくなれるよう努力していく所存です。
そして支えてくださった方々へ少しでも御恩をお返しできるよう努めて参ります。

黒帯を締める事へのお許しをいただき、まだ何にもなれないけれど、何かになっていける気がしています。

※福井中央支部情報はこちらよりご確認下さい。


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