10月18日から19日にわたり、第57回全日本空手道選手権大会が東京体育館で開催された。カザフスタンやAINなどの外国人選手や、5月に開催されたWFKO世界大会の初代チャンピオン7名も参戦するなど、国内最高峰の舞台にふさわしい超豪華メンバーが集結した。19日の最終日は組手部門男子の三回戦~決勝戦と女子の準々決勝戦~決勝戦が行なわれ、男女王者が決定した。
【男子三回戦】
初代KCC王者であり前回大会3位の岡田侑己は、イェラマン・ムカシェフを蹴りと突きのスピーディーな攻撃で圧倒し、本戦5-0で快勝。前年ファイナリストの遠田竜司はパヴェル・フェフェロフから上段廻し蹴りで技有りを奪取し、本戦5-0で四回戦へ進出。第1回WFKO世界大会王者である渡辺和志は、古庄正樹との高速の打ち合いを制し、本戦5-0で勝利。前回大会4位と健在な強さを見せるベテラン・前田勝汰は序盤から圧力をかけ続け、北嶋治将を本戦5-0で撃破。第7回世界ウエイト制大会王者・𠮷澤穂高とWFKO世界大会を制したアントン・ジマレフとの一戦は、延長にもつれ込む激闘の末、5-0で𠮷澤に軍配が上がった。その他、堀之内陽逞、鈴木皓大、塚本慶次郎、多田大祐、落合奏太、金岡陽大、アンジェイ・キンザースキー、髙橋耕介、渡辺優作、後藤光之介、湯川智仁が四回戦進出を決めた。
【男子四回戦】
岡田侑己と堀之内陽逞の一戦は、上段への蹴りや重みのある突きが飛び交う、一時も気の抜けない攻防が展開された。本戦、延長を経て再延長も1-0と決着がつかず、最後は体重判定により岡田が勝利を飾った。鈴木皓大と塚本慶次郎は、本戦から接近戦での攻防を展開。再延長まで両者死力を尽くすも判定1-2と決着には至らず、体重判定で塚本がベスト8進出をはたした。多田大祐と𠮷澤穂高の対決は、互いの突きと下段蹴りが交錯する激闘に。終盤は互いにギアを上げた打ち合いの末、本戦3-0で多田が勝利を手にした。渡辺和志と落合奏太の闘いは、互いに渾身のラッシュを繰り出し一進一退の展開に。胸への強烈な突きを効かせた渡辺が本戦3-0で勝利した。金岡陽大と前田勝汰による激闘は、突きとヒザ蹴りで猛攻を仕掛けた金岡が本戦5-0で勝利。昨年4位の前田の牙城を崩した。アンジェイ・キンザースキーと髙橋耕介の試合は、上段ヒザ蹴りで技有りを奪ったキンザースキーがペースを掌握し、本戦5-0で勝利した。渡辺優作と後藤光之介の闘いは、突きと下段蹴りの応酬となる。激しい競り合いの中で後藤に注意3が課されたこともあり、本戦5-0で優作に軍配が上がった。遠田竜司と湯川智仁の闘いは、力強い下突きの連打から一気に前に出た遠田が本戦5-0で勝利。ベスト8が出揃った。
【男子準々決勝戦】
互いに蹴りを得意とする岡田侑己と塚本慶次郎の一戦は、序盤に後ろ廻し蹴りをクリーンヒットさせるなど岡田が優位に立つ。熱戦の最中、塚本に注意2が課されたこともあり、本戦5-0で岡田が準決勝に駒を進めた。渡辺和志と多田大祐の闘いは、強烈な下段蹴りを軸に攻める多田に対し、和志も突きの連打で応戦。再延長までもつれ込む激闘の末、最後は体重判定で和志が勝利をつかんだ。アンジェイ・キンザ―スキーと対峙した金岡陽大は接近戦で勝機を見出さんとするも、キンザ―スキーが強烈なヒザ蹴りや上段廻し蹴りで迎撃。本戦5-0でキンザースキーに軍配が上がった。開始から激しい打ち合いとなった遠田竜司と渡辺優作の試合は、回転の速い突きや力強い下段蹴りで攻めた優作が優勢となり、本戦4-0で前年ファイナリストを破って4強入りを決めた。
【男子準決勝戦】
準決勝第1試合では、岡田侑己と渡辺和志が激突。和志は回転の速い突き、岡田は変幻自在の足技と、互いに強みを発揮した闘いは白熱の展開に。勝負は延長にもつれ込むと、下段廻し蹴りで和志が技有りを奪取。岡田もヒザ蹴りや後ろ廻し蹴りを放つなど反撃するも挽回ならず、延長5-0で和志が決勝進出を決めた。アンジェイ・キンザースキーと渡辺優作による準決勝第2試合では、優作が序盤から密着して突きを繰り出していく。キンザースキーも応戦し一進一退の接近戦が展開される中、優作に注意2が課されてしまう。熱戦の末、本戦5-0でキンザースキーに軍配が上がった。
【男子3位決定戦】
男子3位決定戦はケガを抱えてトーナメントを闘った岡田侑己にドクターストップがかかり、渡辺優作の不戦勝となった。
【男子決勝戦】
渡辺和志とアンジェイ・キンザースキーによる決勝戦は、序盤から和志が密着して接近戦を挑むも、一瞬の隙を突いたキンザースキーが上段ヒザ蹴りを一閃。本戦42秒で衝撃の一本決着となり、半世紀以上守り抜いた王座が初めて海外選手に流出した。決勝後のインタビューでキンザースキーは「優勝できたことをうれしく思います。一緒に練習してきた先生方、生徒の方々に感謝でいっぱいです。決勝戦ではとくに激しい闘いをしました。またこの舞台に戻ってこられるように精進します。支えて下さった皆さんがいなかったらここに立つことはできませんでした。ありがとうございました」と思いを語った。
【女子準々決勝戦】
前回大会準Vの目代結菜は、第53回大会3位の水谷恋を突きの連打で押し切り本戦4-0 でセミファイナルへ進出。前年3位の藤原桃萌は宇都宮美咲と対峙すると、力強い下突きを軸に攻め立て、4-0で勝利を飾った。網川来夢と水谷藍によるWFKO世界大会チャンピオン対決は、ヒザ蹴りや突きの連打で打ち合いを制した網川が本戦3-0で勝利。鈴木未紘と細谷誉による同い年対決は、互いに力強い突きと下段蹴りをぶつけ合う好勝負に。最後は圧力をかけ続けた鈴木が本戦5-0で勝利した。
【女子準決勝戦】
女子4強同士の争いとなった女子準決勝戦。第1試合、藤原桃萌と目代結菜の闘いは本戦序盤から激しい打ち合いになる。判定1-0と決着がつかず延長戦にもつれ込むと、胸に左右の突きを叩き込んだ藤原が優勢となり、延長4-0で決勝進出を決めた。鈴木未紘と網川来夢による準決勝第2試合は、コート中央で両者譲らぬ打ち合いを展開。ヒザ蹴りと突きを軸に攻める網川だが、徐々に鈴木の圧力が上回る形になり、本戦5-0で鈴木がファイナルへ駒を進めた。
【女子3位決定戦】
目代結菜と網川来夢が3位決定戦を争った。互いの意地がぶつかり合った一戦は、目代が突きの連打、下段蹴りで攻勢に出ると、網川もリーチを活かした蹴り技で応戦。本戦は1-0で決着がつかず、延長戦では壮絶な打ち合いの末、判定5-0で目代が勝利。WFKO世界大会女子軽重量級決勝のリベンジをはたした。
【女子決勝戦】
昨年、3度にわたって拳を合わせた鈴木未紘と藤原桃萌が決勝で相まみえた。本戦開始早々、コート中央で激しい打ち合いとなり、力と力の真っ向勝負を展開。藤原の勢いを真っ向から受け止め、押し返した鈴木が打ち合いを制し、本戦4-0で勝利。堂々の全日本大会3連覇を達成した。晴れやかな表情で優勝インタビューに応じた鈴木は「たくさんの方々に支えられ今大会も優勝することができたので本当に感謝の気持ちでいっぱいです。去年の全日本は自分自身に悔しい、情けないといった気持ちが残ったので、自分自身へのリベンジとして今回やってきました。今後は世界大会連覇に向けてしっかりとがんばっていきたいと思います」と周囲への感謝と、目標への思いを力強く口にした。
【Dream Winners紹介】
男子四回戦と女子準々決勝戦の後には、ドリームフェスティバル2025で入賞をはたしたDream Winnersの紹介が行なわれ、組手でドリーム3連覇をはたした緑晴と、組手・型のダブル優勝を飾り、組手では2連覇を達成した久野久美が代表して思いを語った。
【演武】
男子準々決勝戦の後には少年演武が行なわれ、元気いっぱいな声が東京体育館に響いた。男女準決勝の後には、型部門を制した男女チャンピオンによる演武が行なわれ、角野将太が五十四歩、星芽里が観空を披露した。
男女3位決定戦の後には、今年4月15日に遭った交通事故により左脚を切断する重傷を負った木元正資師範(神奈川東横浜支部支部長)による特別演武が行なわれた。今日に至るまでの日々や道場生からのメッセージが収録された映像が上映された後、舞台に登壇した神奈川東横浜支部のメンバーと基本稽古を実施。続いて転掌の型を披露したのち、ヒジ打ち、裏拳、手刀、正拳突きで瓦を叩き割る。最後はふたたび登壇した支部のメンバーとともに気合いを込めた正拳中段突きで演武を締めくくった。
インタビューを受けた木元師範は復帰までの思いを語りつつ、「極真魂とはあきらめず、物事を完遂する力強い気持ちだと思います。少年部の生徒には自分の夢をあきらめず、より多くの夢を持ってほしいです。可能性は無限にあると思います。自分が思い続ける限り、その夢は必ず成し遂げることができると思いますので、ぜひそういう夢を大切にしてほしいと思います」と未来を担う少年少女たちにエールを送った。
【入賞者】
男子
優 勝:アンジェイ・キンザースキー(カザフスタン支部)
準優勝:渡辺和志(世田谷・杉並支部)
第3位:渡辺優作(世田谷・杉並支部)
第4位:岡田侑己(和歌山支部)
第5位:遠田竜司(東京江戸川支部)
第6位:金岡陽大(川崎東湘南支部)
第7位:塚本慶次郎(世田谷・杉並支部)
第8位:多田大祐(白蓮会館)
敢闘賞:後藤光之介(東京城南川崎支部)
技能賞:アンジェイ・キンザースキー(カザフスタン支部)
女子
優 勝:鈴木未紘(厚木・赤羽支部)
準優勝:藤原桃萌(福岡支部)
第3位:目代結菜(東京城南川崎支部)
第4位:網川来夢(福岡支部)
敢闘賞:細谷 誉(埼玉大宮西支部)
技能賞:宇都宮美咲(大阪神戸湾岸支部)