誰が勝っても初優勝。前年覇者の多田成慶が出場しないことで、組手男子はいつにも増して予想が困難だ。一方で組手女子は絶対女王の鈴木未紘の牙城を誰が崩すのかが最大のテーマとなる。男子は一度も流出を許していない王座を死守できるのか。そして女子は4強のパワーバランスに変化が見られるのか。見どころは尽きない。
男子組手
■Aブロック
階級別世界一の称号は逃したものの、JFKO国際大会重量級を制した岡田侑己が不動の中心となる。イェラマン・ムカシェフ、澤井天心などWFKO世界大会を賑わせた軽量階級の実力派が控えるが、新エース候補としてブロック内での早期脱落は許されない。ただ対抗の塚本慶次郎の勢いは侮れない。WFKO世界大会では惜しくも優勝を逃がしたが、中量級戦線で確固たる地位を確立。前回大会5位からのジャンプアップも夢ではない。その他では前平斗真、水谷翔、ポーランドの新世代選手であるマテウシュ・マズールもブロック突破の可能性を秘めている
■Bブロック
BブロックはWFKO世界大会で悲願のビッグタイトルを獲得した渡辺和志が4隅のシード枠を勝ち取った。近年では岡田、網川来夢のように、ひとつのキッカケで大化けする選手も多い。軽重量級世界一の称号を自信に変え、満を持してエース争いの輪に加わりたい。ただ中量級世界一に輝いたアントン・ジマレフも、優勝候補筆頭と呼べる存在だ。𠮷澤穂高、多田大祐が控える厳しいブロックとなるが、外国人選手初となる全日本王座戴冠を目指す。福岡支部所属での出場となるサミュエル・ハラスも、ブロック突破の実力を十分に有している。
■Cブロック
JFKO国際大会軽重量級覇者の前田勝汰が、こだわりの無差別全日本で初戴冠を目指す。コロナ禍による長期戦線離脱はあったものの、爆発的な攻撃力は無差別級の中でもトップクラス。若手の有望株が多く集うブロックとなるが、世代交代の実現は至難の業だ。前田を追う筆頭格が前回大会で8位入賞をはたした髙橋耕介と、WFKO世界大会軽重量級3位の金岡陽大。大会を重ねるごとに安定感も増しており、昨年以上の活躍が期待される。また北嶋治将、アンジェイ・キンザースキー、平木楓も勝ち上がりを予想する上で見逃すことができない存在だ。
■Dブロック
昨年、多田成慶と激闘を展開した遠田竜司が最終ゼッケンを背負う。世界大会で覚醒した新エース候補は、JFKO国際大会で工藤昂朗に不覚を喫したものの、全九州大会できっちりと軌道修正。同ブロックに工藤が座る組合せは、モチベーションをさらに高める好材料となるだろう。工藤が座る山には江口雄智、湯川智仁も控える。本来であれば優勝候補として名前が挙がってもおかしくない選手だけに、今大会の結果で完全復調を印象づけたい。前回大会6位の渡辺優作も、ブロック突破の実力を十二分に有している。遠田を取り巻く包囲網は強力だ。
女子組手
■Aブロック
女子4強を形成する目代結菜と藤原桃萌が、勢い、安定感ともに他を一歩リードする。無差別級を苦にしない水谷恋、レジェンドとも言えるイリーナ・ワリエワなどが控えるが、悲願の初優勝を狙う目代にとってブロック突破は至上命題だ。一方で、藤原はブランク明けながらJFKO国際大会女子重量級を制した野邑心菜のコンディション次第で戦局が大きく変化する可能性がある。その他でも同じくJFKO国際大会で復活をアピールした宇都宮美咲、松田理央、井上ほの花、最重量85㎏のヴァレリヤ・クレスティナなど注目選手が目白押しだ。
■Bブロック
絶対女王・鈴木未紘の独走を止めるのは誰なのか。組手女子のテーマは、この一点に集約されるといっても過言ではない。史上最年少でグランドスラムを達成した女王に死角はなく、追う選手側には目に見えるレベルでの上積みが求められることになるだろう。その一番手となるのが、目代を下しWFKO世界大会で軽重量級世界一に輝いた網川来夢。世界大会準Vで覚醒したように、初のビッグタイトル獲得がさらなる成長を促す可能性は十分ある。成長著しい水谷藍、児玉亜瑞、渡部はるあらも包囲網を形成する一角として注視が必要だ。
型男子
■型男子トーナメント
初代王者・田中健太の不出場を受け、最大のライバルである中内功大が最終ゼッケンを背負う。組手と比べてアップセットが少ないと言われる型競技だが、新世代の台頭もあり実績組も終始、息の抜けないトーナメントになりそうだ。新世代の筆頭格と言えるのが、第56回全日本大会型3位、ドリーム型2連覇中の角野将太。本人が思い描く青写真は、同門の中内を下しての世代交代に違いない。ただ世界大会日本代表の志村朱々璃、山崎一平のベテラン勢も安定感があるだけに、大友伯、繁田幸英、瀧本龍ノ介らを含めた10代選手にとっても厳しい闘いを強いられそうだ。
型女子
■型女子トーナメント
女子も初代女王の田中利奈がエントリーしていない。世界大会準Vの山中咲和がビッグタイトル獲得に突き進む。対抗に座るのは、その山中と今年のドリーム型・19歳以上30歳未満決勝戦で接戦を展開した細谷希花。実力はトップ選手と遜色なく、全日本王座の獲得で従来の序列を一気に塗り替えたい。この2人を猛追するのが世界大会日本代表の入来智羅咲と谷口亜翠佳。そしてドリームやブロック大会で実績を残す星芽里、佐藤りさこだろう。ただ男女ともに不気味なのが、実力未知数のAIN勢の存在だ。
第57回全日本空手道選手権大会
【開催日】2025年10月18(土)、19(日) 両日 9時開場、10時試合開始
【会場】東京体育館(JR総武線千駄ケ谷駅、大江戸線国立競技場駅)
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