――JFKO全日本大会重量級の連覇、そして世界大会への代表権獲得おめでとうございます。
「ありがとうございます。世界大会がかかった大会で、どうしても代表権を得たかったのですが、優勝できてホッとしました」
――重量級はベスト4までが代表権を獲得できる枠でした。
「ベスト4に入ったら代表権を得られることはわかっていたのですが、新極真会の大会ではなかったためか、会場ではそういうアナウンスが一切なかったんです。だからちょっと不安になって、準決勝の前にセコンドについてくれていた賀数拓海選手に『ベスト4に入ったから、もう世界大会に出られるんだよね?』と聞いたら、賀数選手が『優勝しなかったら出られないと思ってください』と言ってくれました。おかげで『そうだ。優勝しなくては意味がないな』と気合いを入れ直すことができました」
――代表権を獲得してもそこで気を緩めなかったんですね。今回の勝因はなんですか。
「試合前の稽古の時から、一つひとつの稽古に感謝の気持ちを持って、『これで終わってもいいんだ』というくらい一回一回の稽古に命を懸けて臨んだからだと思います」
――そこまでモチベーションを上げられたのはどうしてですか。
「昨年の全日本大会は、応援してくれる方が大勢いる東京の大会にも関わらずベスト16で負けてしまいました。また、大会前は南里師範、遠田師範代、塚本先輩やいろいろな方が支えてくださっていたのに、みなさんを悲しませてしまいました。試合後に申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。負けた悔しさもありましたが、『二度とみなさんにあんな思いをさせたくない』と思ったことが一番モチベーションにつながりました」
――決勝戦の落合光星選手との対戦は、体重差40㎏にもかかわらず壮絶な打ち合いに挑みました。どうして打ち合ったのですか。
「最初は上段を蹴っていましたが、突きは飛んでくるし、下段は蹴られるし、あのままだったら負けると思いました。勝てるかどうかわかりませんでしたが、手数を出していくつもりでいきました」
――落合選手の攻撃は外国人選手と比べるといかがですか。
「あんなに重みのある突き蹴りは初めての経験でした。外国人選手と比べてもすごいです。外国人選手の攻撃は拳やスネがゴツゴツと硬いので〝痛い〟というイメージですが、技の重みは落合選手のほうがありました。力で持っていかれるような感じですね」
――昨年の優勝と今回の優勝はどちらがうれしかったですか。
「今回ですね。前回の大会は何もかもが初めてでしたし、自分も失うものは何もない中で闘っていました。でも今回は違いました。試合前にいろいろなマスコミで取り上げていただいたり、ポスターに写真を使っていただいたりしたので、自然とプレッシャーがかかりました」
――試合への影響はありましたか。
「一試合一試合、マットに上がる前は心臓がバクバク鳴っていたり、異常に喉が渇いたりしました」
――必死でプレッシャーと闘っていたのですね。さて世界大会への出場を決めた後、日本代表強化合宿もありましたが、参加していかがでしたか。
「一流のコーチの方々に見ていただけたことや、同じ大会に出る選手同士で切磋琢磨できたことは良かったと思います。周りはみんな強い選手だったので、気が引き締まりました。やはり世界大会に出る選手はみんな稽古に対する意識も違うので、刺激を受けてさらにモチベーションも上がりました」
――日本の王座は死守できると思いますか。
「できると思います。それは合宿で確信しました。短い期間でしたがみんなで一緒に稽古をして、寝食を共にして、そこで語りあったおかげで、一致団結して大会に臨む心の準備ができたと思います」
――山本選手はワールドカップやポーランドのKokoro cupで世界戦を経験済みですね。
「とくにKokoro cupに三度出させていただいたのは良い経験になりました」
――2012年は5位、2013年はマシエ・マズール選手と決勝を争って準優勝でした。
「マズール選手はこちらの攻撃が効いたと思っても、そこからまた攻め返してくるんです。非常に根性がありました」
――セコンドもいない状態で闘ったと聞きました。
「決勝の前までは小林功副代表についていただいていたのですが、決勝戦は小林副代表も主審を務めておられたので、通訳の人に時間だけ言ってもらいました。アウェーの中の闘いは勉強になりました」
――ところで第11回世界大会には〝武道〟というテーマが掲げられました。山本選手にとって武道とはなんですか。
「心です」
――山本選手はいつもテクニックやフィジカル面より〝心〟を重視しているようですね。
「心が充実していないと稽古にも身が入りません。日本代表として世界大会に出場させていただく以上、フィジカルの強化や技の研究を積み重ねるのは当たり前の話で、その上で心を磨かなくてはいけないと思うんです。悪い行ないをせず、心を穏やかに保てるようにすることが一番重要だと思います」
――悪い行ないとはなんですか。
「一つの例を挙げると〝怒りの感情を持つこと〟です。怒りの感情を持って組手の稽古をすると、結局、自分がどこかを痛めてしまったりするんです」
――悪い行ないは自分に返ってくるのですね。
「それと同時に重要なことはいつも感謝の気持ちを持つということです。稽古で組手を行なって、何か技をもらったら、それは自分の悪いところを教えていただいているんです。〝怒りの感情〟ではなく『ありがたい。ここを直さなくてはいけないんだな』と、謙虚に感謝の気持ちを持っていれば、教えていただいたことすべては自分の力になります。そして支えていただいたみなさんに恩返しをするつもりで闘えば、決してあきらめることはありません。一番大切なのはそういう〝心〟なんです」
山本和也「一番大切なのは心です」
2015.10.18
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