夏本番を迎え、蝉の声が木々に響き、道場へと向かう私たちの心も奮い立たせてくれます。ヨーロッパをはじめとする各地では、サマーキャンプが真っ盛り。老若男女が太陽の下で純白の道着をまとい、全力で突き、蹴り、気合いを響かせている光景が、世界のどこかで今まさに展開されていることに、大きな喜びとつながりを感じています。
その一方で、昨日発生したロシア・カムチャッカ半島沖の大地震と津波被害には、深い衝撃を受けました。現地では沿岸部の工場への被害も報道され、日本でも津波警報が発令されました。被災された皆様に心よりお見舞い申し上げるとともに、近隣にお住まいの方々のご無事をお祈りいたします。余震も予想されるなか、どうか引き続き安全にお過ごしください。
さて、5月末に開催された「第1回全世界フルコンタクト空手道選手権大会」から2か月が経ちました。あの熱気と感動が日常の中に静かに溶け込んでいく中で、新極真会は次なる挑戦へと歩みを進めています。
7月19日・20日に開催された「カラテドリームフェスティバル2025全国大会」には、のべ3,273名の選手が参戦し、222の階級で熱戦が繰り広げられました。とくに小中高生による全日本組手選手権では、全国の選抜大会を勝ち抜いた精鋭たちが初戦から激突。選抜制の導入によって、競技の質と緊張感はかつてない高さに達しました。
この取り組みは、WKOおよび新極真会が進める「強さによる独自性」の追求であり、多様化するフルコンタクト空手界における育成戦略の要でもあります。さらに、シニアの型・組手の部門でも、年齢を重ねた選手たちが重厚な技と安定感で魅せ、若年層とは異なる価値を示しました。
このような大規模大会を支えるには、試合運営の効率化が不可欠です。今年のドリームフェスティバルでは、オンラインによる勝ち上がり管理、12基の会場モニター表示、スマートフォン連携などを導入し、約2万人の来場者の人流制御とスタッフの業務軽減を実現しました。これらのシステムは、ヨーロッパで実績を積んだ技術をもとに、日本のメガトーナメント形式に最適化したものです。試合場の配置やフローには「国際ハブ空港」をイメージし、快適で洗練された空間を目指しました。
10月には「第57回全日本空手道選手権大会」の開催を控えており、世界各国からのエントリーも続々と届いています。本大会は外国人選手にも門戸を開いたオープン形式を採用しており、国際競技としての成長を実感できる舞台となるでしょう。
今大会では、特例としてロシアの空手家にも出場の機会を開放しました。6月初旬には、ユーリ・ジャバノフ師範、レオニド・イリューシキン師範と面会し、長引く国際的孤立の中で道場を支えてきた苦悩と希望の声を伺いました。また、ウクライナ支部やヨーロッパ諸国の役員とも意見を交わし、戦争の痛みと、スポーツに政治が影を落とす難しさをあらためて感じました。今回の決定は、2023年世界大会以降のWKO理事会決議を踏まえつつ、国内大会という限定的な形で交流再開の道を模索するものです。関係者の皆様のご理解に、深く感謝申し上げます。
また、南米からはブラジル支部(新任・西村勇師範)より、西村リュウ選手の出場も予定されています。次世代を担う南米のホープとして、彼の健闘にも大きな期待を寄せています。
そして最後に申し上げたいのは、フルコンタクト空手がこれほどの広がりを見せる中で、その競技性の標準化と審判制度の強化が今後ますます重要になるということです。第1回世界大会で得られた多くの経験と反省を踏まえ、私たちは世界各地で審判研修の体系化を進めていきます。選手が全力で鍛錬に励むのと同様に、審判もまた学び、備えることが求められます。
空手は、競技であると同時に、文化であり、人と人をつなぐ架け橋です。私たちはこの時代に空手を学ぶ者として、世界の課題に目を向けながらも、対話と理解を促す存在でありたい。フルコンタクト空手を通じて、世界の調和に貢献できるよう、これからも誇りと責任をもって歩んでまいります。
押忍
2025年7月末日
全世界空手道連盟新極真会
代表 緑 健児