新極真会、その未来への躍進


新極真会、その未来への躍進ヨーロッパ選手権2019が無事成功裏に終わった。今回はヨーロッパ、いや世界的にも有数の強豪を多数育成するリトアニアが主催。国代表はロマス・ヴィトカウスカス支部長が務めている。ロマス支部長は、ヨーロッパ地区の副会長をはじめ、WKOやWFKOの理事も任されている。持ち前のビジネスセンスを土台にした活躍が国際的に認められている証と言える。

本大会には、在リトアニア日本国大使館より山崎史郎特命全権大使のご臨席もいただいた。


リトアニアでは、14才から21才までの若い世代を組織的に育成するシステムを構築しており、そうした成果が今大会の入賞選手の顔ぶれにも随所に現れた。重量級で準優勝したパウリウス・ジマンタス選手などはその象徴といえる。18才で、荒削りであるがパワフルな若さの勢いは特に目を引いた。そして、19回目のヨーロッパ選手権を獲った中量級のヴァレリー・ディミトロフ選手も優勝後のインタビューで「とても厳しい戦いであった。そして、リトアニアの若い選手が多数育っている」とその成長を称えた。
トーナメントのレポートは別にするが、組織的にはヨーロッパは大きな転換期を迎えたように見受けた。


決勝戦ではジマンタス選手の若さと勢いを全身で受け止めたマシエ選手も、序盤こそジマンタスの勢いに押される場面もあったが、底力の違いを見せつけて一本勝ちを収めた。

今大会に合わせて、ヨーロッパ地区の役員選挙が行われ、クーン・シャレンベルグ師範の再選が決まった。クーン師範は、大山総裁在命の池袋総本部での修行歴があり全日本選手権にも出場した。もちろん、世界大会はオランダ代表で活躍した強豪である。こうした武道精神、そして空手母国・日本への尊敬や理解を胸に秘めた師範ゆえにWKOやWFKOといった世界連盟でも副会長に推されるのは自然な流れといえる。
今回のヨーロッパ地区の人事を見ても、今まで以上に武道性を根底に据えた日欧友和を大切にする役員構成の色が濃いように感じる。ミカエル・ソデルクヴィスト師範やヤン・ビュロウ師範といった高弟方の(再)当選、7,500名の登録会員を誇るポーランドの国代表を務めるレミギュシュ・カラピンスキー師範も再選。このほか、ウクライナのアレクサンダー・ゴンチャレンコ師範やブルガリアのボリス・ニコロフ師範の当選も心強い。弁護士として活躍するベルギーのマーティン・ミッシェル師範もWKOのヨーロッパ地区理事(他はクーン師範、ロマス師範)に再選が決まった。日欧友和、そしてヨーロッパの論理的思考の推進役を担う人事ではないか。
今大会の役員席や表彰では、ハワード・コリンズ師範やブライアン・フィトキン師範、そしてフルコ・カルマン師範といった長年にわたって組織に貢献してきた高弟方への配慮が感じられた。積み重ねてこられた英知に学ぶ。その先達への尊敬の念の表現に心が温かく、気持ちが引き締まる思いがした。現世界チャンピオンの島本雄二選手にも、そうした高弟の師範方と並んだところに席が用意された。極真の歴史、そして大山総裁の教えを肌で感じてもらおう、そんな当代への優しさと奥深さを感じさせてくれた。
今年、フルコンタクト空手界は世界的に大きく躍進する一年となる。2020年に開催が迫ってきた第1回全世界フルコンタクト空手道選手権大会の運営母体となる国際連盟の創設、そして各地区選抜戦の本格化がその柱だ。各地区でもフルコンタクト諸派との協議会は活発になるだろう。日本では6年の大会史(JFKO)やその道程が示すように、300流派を超える異なる団体の協調は簡単な道のりではなかった。そうした苦難も、ヨーロッパではこれからが本格的なスタートとなる。



大会期間中に行った臨時のヨーロッパ国代表会議には、緑代表をはじめ小林副代表、三好副代表が出席し、今後のWFKOの活動、そして地区選抜の方法について、とても建設的で未来志向の話し合いが持たれた。「相手の考えをよく聞く。そして精一杯理解する」。これこそが、フルコンタクト空手団結の土台。簡単なようで難しい。出席者の疑問や不安の声に最後まで耳を傾けて呑み込む。そして、より良い結論をともに生み出していく。それが、緑代表がけん引するWKOの運営スタイルである。
席上、緑代表からは、いち早くJFKOの活動に呼応する形で、ヨーロッパ・フルコンタクトキャンプの開催に尽力したベルギーのコーン・スピテールス師範に、ヨーロッパ選抜戦の実務者として大きな期待が寄せられた。スピテールス師範も、今回のWFKOの世界理事への就任によって、持ち前の国際的な実行力を発揮する舞台を得た。いずれにしても、来年2月末が選手申し込みの期限であることから、諸流派団体との交流や調整はヨーロッパ地区だけでなく、世界各地区の重要な課題となろう。


今大会には、2015年以降、新極真会と国際的な極真空手の振興を軸にした提携関係を保持する極真世界連合(KWU)から役員が出席して親交を深めた。世界大会実行委員長(2019年開催、KWU主催)のセルゲイ・スヴォロフ師範や、事務局長のアレクサンダー・ピチュクノフ師範が来場した。来場の合間を縫って、互いの世界大会への選手派遣も協議するなど、良好な関係を確認した。
一方では、WKOの組織拡大に伴って、国レベルで様々な問題も浮上している。大山総裁在命時代より、WKO(当時のIKO)は日本を中心とする支部長制度の世界的導入によって、多くの支部長が誕生し、組織は日本の求心力を維持しながら世界に拡大した。この後、94年の大山総裁のご逝去を機に、地区連盟や国連盟による自治活動が活発となったのが90年代後半のトレンドといえる。4年に一度の世界ウエイト制空手道選手権大会の開催は各地区で持ち回り、出場選手も各地区で選抜するのもそうした流れからくる。こうした支部長制度と国連盟による自治活動の兼ね合いから、国内活動に不和が生じる事例が近年散見されている。大会期間中にもそうした不和の調停に奔走した。組織に貢献する支部長の充足は大切にしたい。

いよいよ、史上最大規模の第12回世界大会の開催が目前に迫ってきた。ロマス・ヴィトカウスカス師範を中心として、関係各位が一致団結して成功裏に導いた今回のヨーロッパ選手権。その成功が、この世界大会への大きな弾み、そして来たる2020年に開催される世界フルコンタクト選手権への躍動に火を点けたに違いない。加盟100カ国が目前の新極真会はますます未来に向けて躍進する。

WKO事務局長 小井泰三


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