7月21日、国立代々木競技場第二体育館で新たな世界大会である「第1回空手Champion of Champions」(KCC)が開催された。記念すべき第1回大会には、世界各国から選りすぐりの強豪選手が集結。賞金総額3,000万円、優勝賞金1,000万円。男女各8選手によるワンデイトーナメントと、通常とは大幅に異なる形式のため各方面から注目を集めた。
新機軸の世界大会ということもあり、場内には照明やビジョンなど大掛かりな演出が施された。まずマイクを握ったのはアンバサダーとして大会の盛り上がりに一役買ったケンドーコバヤシ氏。「第1回空手Champion of Champions、全選手の入場です!」とのコールを背に、選ばれし16選手が花道から登場した。その後は国歌斉唱に続き、緑健児代表が開会あいさつを行なった。
【女子一回戦】
歴代世界王者を含めた豪華な審判団の紹介が終わると、いよいよ一回戦がスタート。通常の大会では見られない選手紹介映像に続いて、ブリジタ・グスタイタイテ、目代結菜がそれぞれのテーマ曲に乗って入場ゲートから登場した。
第7回世界ウエイト制大会重量級王者のブリジタ・グスタイタイテ(リトアニア)と、世界大会、全日本大会など主要大会の入賞の常連である目代結菜(日本)の一戦は、グスタイタイテの下突きと目代の正拳突きが交錯する形に。ステップを踏みながら目代が効果的な突きを積み重ねたが、ワンツーがアゴやノドに流れるなどの不運が重なり減点1。グスタイタイテが本戦5-0で準決勝進出を決めた。
第13回世界大会で準優勝。覚醒の時を迎えた網川来夢(日本)が、ヨーロッパの主要大会で多くの入賞経験を持つミリヤム・ビョークルンド(スウェーデン)を迎え撃った一戦。ビョークルンドがうまく距離を取りながら下突きを見舞うも、目代と同様にノドへの攻撃、顔面殴打で減点1を課せられ失速。逆に効果的な中段ヒザ蹴りを積み重ねた網川が本戦5-0で勝利した。
第9回JFKO全日本大会重量級準優勝。KCCへの推薦出場を勝ち取った藤原桃萌(日本)は、序盤から重い下突きと内股への下段蹴りでペースを掌握。全ヨーロッパ大会軽重量級の絶対王者とも言えるイヴァンカ・ポポヴァ(ブルガリア)も上段ヒザ蹴りなどで反撃を試みたが、残り30秒でラッシュを仕掛けた藤原が本戦3-0で逃げ切った。
直近の世界大会、全日本大会、JFKO全日本大会を制し、KCCでも大本命と目されている鈴木未紘(日本)が、未知の強豪であるアリーナ・オシペンコ(カザフスタン)と初戦で激突した。序盤は下段廻し蹴り、上段外廻し蹴りの奇襲でオシペンコが互角以上に渡り合ったが、中盤に入ると鈴木が左の下段廻し蹴りと突きで反撃を開始。終盤にオシペンコを後ずさりさせた鈴木が本戦4-0で勝利した。ただ、ジュニアタイトルを総ナメにしているだけあって、オシペンコもKCC代表にふさわしい実力を大舞台で発揮した。
【男子一回戦】
第7回世界ウエイト制大会重量級王者のエヴェンタス・グザウスカス(リトアニア)と、カザフスタンの新星、アンジェイ・キンザースキーの一戦は、予想に反して序盤はキンザースキーがペースを握った。遠い間合いから下段廻し蹴りを放つと、そのたびにグザウスカスの動きが止まる。会場の一角を埋めたカザフスタンの大応援団からコールが起こる中、キンザースキーがなおも攻勢を仕掛ける。だが終盤に差し掛かる場面で、グザウスカスが一気にギアをチェンジ。突きのラッシュでキンザースキーを後退させたグザウスカスが、本戦3-1の薄氷ながら一回戦を突破した。
第9回JFKO全日本大会重量級を制し、他流派ながらKCC出場権をつかんだ多田大祐(日本)は、絶妙な距離から放つ突きと下段廻し蹴りで序盤から優位に試合を展開。マシエ・マズールも中盤から重い中段ヒザ蹴りで反撃を試みるが、呼応するように多田も得意の下段廻し蹴りでラッシュを開始。危なげのない闘いで、多田が第12回世界大会&第7回世界ウエイト制大会準Vのマズールを本戦5-0で振り切った。
第13回世界大会で優勝した入来建武に次ぐ日本人最高成績を収めた岡田侑己(日本)と、第13回世界大会で4位に食い込んだアントン・ジマレフ(カザフスタン)の一戦は、後ろ蹴りや胴廻し回転蹴りがコート上で交錯するスリリングな展開となった。一発KO級の上段ヒザ蹴りを放つジマレフに対し、岡田も世界大会を彷彿とさせるような終盤のラッシュで形勢を逆転。岡田が観客席を大いに沸かした上で準決勝へと駒を進めた(本戦3-0)。
第8回JFKO全日本大会重量級王者であり次期エース候補の渡辺優作(日本)が、初戦で全ヨーロッパ大会軽重量級王者のマレック・ヴォルニーと激突した。かなりの身長差があるため序盤はやや攻めあぐねた渡辺だが、スピードを活かした突きでペースを引き寄せると後半も攻めを継続。ヴォルニー側の減点1(胸をつけての攻撃)もあり、渡辺が本戦5-0で初戦突破に成功した。
【女子準決勝戦】
ともにヒザ蹴りを得意とするグスタイタイテと網川の一戦は、互いが真っ向からぶつかり合う展開に。本戦は2(グスタイタイテ)-1とほぼ差がつかなかったが、延長戦での手数が評価されたグスタイタイテが5-0で逃げ切った。
世界大会に続き、鈴木と藤原が掛け値なしの好勝負を展開した。力強い下突きと下段蹴りを放つ藤原に対し、鈴木は上段前蹴りや上段廻し蹴りを織り交ぜる多彩な攻めで応戦。ともに攻め手を緩めず、鈴木から見て本戦1-0、延長2-0となかなか均衡が崩れなかった。最終延長までもつれ込んだ一戦は、中盤以降の突きの連打を評価された鈴木が5-0で勝利。あらためて無類のスタミナと腰の強さを見せつけた。
【男子準決勝戦】
マズール戦と同様に序盤は冷静に突きで距離を測り、中盤以降にギアを上げた多田だが、距離を詰めてくるグザウスカスに対し胸をつけての攻撃で注意2(減点1)を取られ本戦0-5で惜敗。まだ余力を感じさせただけに、やや悔しさが残る結末となった。
次期日本人エース候補対決とも言える一戦は、後ろ蹴りや胴廻し回転蹴りでペースを握った岡田が優位に試合を進める。本戦は1-0となったが、突きとヒザ蹴りで圧力をかけると渡辺が急激に失速。最後まで攻め手を緩めなかった岡田が、延長5-0の完勝で決勝戦へと駒を進めた。
決勝戦の前には演武の時間が設けられ、入来建武が氷柱割り、渡邊大士が世界を制した五十四歩で場内を盛り上げた。
【女子決勝戦】
世界大会王者VS世界ウエイト制大会重量級王者対決となった女子決勝戦は、下突きを軸に攻めるグスタイタイテに対し、鈴木も胸への突きと下段廻し蹴りで応戦。本戦は1-0と差がつかなかったが、延長の中盤になると鈴木が突きで主導権を奪取。大鈴木コールが巻き起こる中、最後まで突きを止めなかった鈴木が公言通りに初代女王に輝いた。試合後には「必ず日本人が王座を獲り、支えてくれた人に恩返しするつもりでいたのでよかったです。今は空手を好きでやっていますが、ここまで来るまでには空手が嫌いになったこともありました。でも逃げずにやってきてよかったです」と周囲への感謝を口にした。
【男子決勝戦】
決勝戦は世界大会でも対峙した岡田とグザウスカスの顔合わせに。世界大会で岡田の圧力に屈する形となったからか、この日はグザウスカスが開始直後から突きで猛攻を仕掛けていく。そのうちの一発が顔面に入り試合が一時中断。やや足元がおぼつかない岡田だが、ドクターチェックの末に試合が再開された。ダメージを考えればグザウスカスが有利と思われたが、岡田は内股蹴りを起点に反撃を開始。グザウスカスも突きを返すが、岡田も上手く回り込みながら効果的な突きを連打。世界大会を思わせるような怒とうのラッシュを見せた岡田が、本戦3-0で見事な勝利を飾ってみせた。
試合後は鈴木と同様に、周囲への感謝の言葉でインタビューを締めくくった。「今までずっと支えてくれた方に恩返しができてよかったです。全力を出し切っても勝てるかどうかという大会でしたが、みなさんの応援で勝つことができました。本当にありがとうございました」
男子
優 勝:岡田侑己(日本)
準優勝:エヴェンタス・グザウスカス(リトアニア)
第3位:多田大祐(日本)
第3位:渡辺優作(日本)
女子
優 勝:鈴木未紘(日本)
準優勝:ブリジタ・グスタイタイテ(リトアニア)
第3位:網川来夢(日本)
第3位:藤原桃萌(日本)