この度、弐段昇段審査の機会を与えて頂き、また昇段の許可を頂き真に有難う御座います。
今日この日までご指導,応援頂きました松本師範はじめ諸先生、諸先輩、道場生の皆様、また審査当日応援頂きました道場生、OB、ご父兄の皆様に心から感謝致します。
40歳を目前に入門させて頂き、早10年の月日が流れました。
強くなりたいとか、選手として活躍したいというよりも、長い人生の中で何かひとつコツコツと積み上げて行きたいという思いと、職場以外のネットワークに身を置き、コミュニケーションの輪を広げたいというのが入門の動機でした。
運動音痴で人一倍飲み込みが遅い事は自分自身が良く知っていますので、とにかく焦らず、あきらめず、怠らずを心がけ、仕事の合間を縫って稽古に通い続ける日々を重ねました。6年目にして念願の黒帯を頂きましたが、昇段審査の内容はボロボロで、いまだにビデオを観る事が出来ずにいます。全身と顔にまで青アザを作り、痛い足を引きずりながらも、「あ~これで二度と審査を受けなくて良いんやぁ」と審査の緊張と恐怖から一生解放された喜びに浸り、その解放感に包まれたまま、4年の歳月が流れました。
二度と審査を受ける事は無いと思い込んでいました、ず~と。
そんな中、昨年末の奈良支部忘年会で支部長の松本師範から爆弾発言が。来年、私他数名に弐段に挑戦してもらうとの事。道場生が沸き立つ中、アルコールの魔力で判断能力を失った私は、後先考えず、「押忍、頑張ります!」と勢いで答えてしまっていました。まさかの弐段です。一生届く事が無いと思っていた、極真の弐段を受審させて頂けるなんて夢のようでした。
重い日々が始まる事など、すっかり忘れていました。でも時すでに遅く、緊張感と恐怖感に包まれる日々が始まったのです。しかも奈良支部初めての弐段昇段審査という事もあり、見た事がありません。想像できないんです、弐段昇段審査がどんなのかって。
年が明け、一緒に昇段審査を受ける道場生も、そして審査の日程も秋と決まりました。わからないのは、やっぱり審査内容です。
新しい型6種類と20人組手を行う事は教えて頂きましたが、それ以外がわからない。ちょっとした意地悪が大好きな松本師範。なんと、審査内容が全て明らかになったのは、審査当日だったのです。お陰様で生殺しの10か月を過ごさせて頂き、精神的にも大きく成長出来たのではと思っています。
審査当日、2時間前に審査会場に集合し、まずは型のリハーサルや雑談をしながら過ごすも、緊張感は高まるばかり。4年前に解放された筈の、あの気持ちが数百倍となって襲って来ます。
緊張感がピークに達する頃、いよいよ審査がスタート。
型の審査を終えた時には、すでにヘトヘトで、何度も繰り返したはずの型の稽古も、本番では間違えないようにするのが精一杯。
そして最難関の20人組手に。
今回、5名が受審した為、組手は2組に分けての審査で私は2組目。まずは1組目の20人組手が始まりました。初めて見る20人組手の想像以上の過激さ,過酷さに、次は自分かと思うと奮い立つより、ただただ呆然としていました。自分の20人組手は無我夢中で、あまり記憶が無いというのが正直なところです。
憶えているのは、あまりのキツさに途中何度もくじけそうになった時、一緒に稽古をした受審者、ご指導頂いた松本師範、対戦相手、必死に応援して下さっている道場生、全ての顔と声が何度も私を救い、最後まで導いてくれた事だけです。組手をするのは自分一人ですが、ずっと仲間が私を守っていてくれました。
20人目は松本師範が相手をして下さいました。最後の力を振り絞る中で、普段師範がおっしゃっている「組手を通じて会話をする」という言葉を、ほんの少しだけ理解出来たような気がしました。
審査が終わった瞬間に感じた、感謝の気持ちと解放感はこれまでの人生の中で、最高のものでした。
まさにボッコボコにされた体はボロボロでしたが、今回の審査を通じて、言葉に出来ない何か大きなものを得る事が出来たように感じました。
一方で準備期間が十分あったにも関わらず、何も出来なかった自分自身の反省は、違う形で次への糧にしたいと思っています。
私は後数か月で50歳になります。入門してから10年という月日が流れ、その節目の年に、こういった光栄な機会を与えて下さった松本師範に心から感謝しています。
空手が上手なわけではなく、組手が強いわけでもない、いわゆる普通の初老の私に、弐段受審の機会を与えようと決心された師範の思いには、大きな意味があると感じています。これまでは自分の為だけに稽古を積み重ねて来ました。
初段を頂いた後も、ただただ続ける事のみに意義を感じている自分がいました。これからもコツコツと稽古を続けていく事に変わりはありません。でも、師範が投げかけて下さった、なぜ私に弐段なのかの答えを見つける稽古へと大きく変化しました。自分の為だけでなく、道場生皆さんの為、奈良支部の為に何が出来るかを考え、見つけ、実践しながら歩んで行きたいと思っています。
ほんの小さな事しか出来ないと思いますが、それでもコツコツと重ねて行けば何かしら形になって行くような、そんな気がしています。どうか今後ともご指導のほど、よろしくお願い致します。
最後になりましたが、今回一緒に受審する予定が怪我の為、残念ながら受審出来なかった前田先輩の一日も早い全快と復帰を願うとともに、日頃近くにいて、ハラハラしながらも無関心を装ってくれている家族に感謝致します。
押忍。
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