10月13日~14日の2日間にわたり、第50回記念全日本空手道選手権大会がエディオンアリーナ大阪で開催された。節目の50回を迎えた今大会は、来年行なわれる第12回世界大会の日本代表第1次選抜戦となるため、他流派の強豪も含めて男子104名、女子37名がエントリーした。男子三回戦~決勝戦、女子準々決勝戦~決勝戦が行なわれた大会決勝日(14日)の模様をお届けする。
【男子三回戦、試割り】
男子三回戦では一昨年、昨年と2年連続全日本大会ベスト8の湯川智仁がKWF極真会館の宮原穣に延長0-5で敗れたものの、その他の試合は大きな波乱も見られず、島本雄二、入来建武、加藤大喜、前田勝汰の四隅のシード選手は順当に四回戦へ進出。続いて男子ベスト16で試割りが行なわれ、島本雄二、落合光星がともに合計20枚を割り、試割賞を獲得した。
【男子四回戦】
四回戦はいきなり大波乱が起こった。島本雄二と並ぶ優勝候補の筆頭・入来建武は越智純貴を迎え撃ったが、越智の下段蹴りが入来の右足にヒットすると、まさかの一本負け。第48回全日本王者が四回戦で姿を消した。
山本和也と????澤穂高の一戦は、突き、下段蹴り、ヒザ蹴りが飛び交う接近戦となったが、山本が一瞬の隙を突いた右内廻し蹴りで技有りを奪い、本戦で新鋭を振り切った。
島本一二三は超重量級の落合光星に対し、一定の距離を保って下段蹴り、中段廻し蹴りを的確にヒットさせ、本戦は島本に2本の旗が上がる。延長終盤には島本が回り込みから突きを連打し、判定5-0で準々決勝進出を決めた。
加藤大喜と山口翔大の一戦は、試合開始直後から接近して激しく突きと下段蹴りを打ち合った。本戦、延長、再延長では決着がつかず、続く体重判定で規定となる10kg以上の差が認められ、加藤が勝利を収めた。
前田勝汰と福地勇人の同級生対決は、前田が一気に距離を詰めて突きを連打していく。終盤には福地をコート際まで追い詰める場面も見られ、本戦5-0で完勝。
岡﨑陽孝と宮原穣の試合は互いにステップを使って突きと内股蹴りを打ち合うスピーディーな攻防が展開されたが、手数で上回った岡﨑に3本の旗が上がり、本戦で決着をつけた。
江口雄智と後迫龍輝の一戦は、正面から突きと下段を打ち合う接近戦となった。終盤になると江口が後迫を押し込む場面が見られ、本戦5-0で勝利を収めた。
前回大会王者の島本雄二は、鳥原隆司に狙いすました右の内廻し蹴りを一閃。島本が本戦で一本勝ちを収め、その強さを見せつけた。
【男子準々決勝戦】
準々決勝第1試合は、ともにここまでの全試合を本戦で勝ち上がってきた山本和也と越智純貴が激突。山本が序盤から左の下段カカト蹴りを的確にヒットさせ、終盤には突き、中段廻し蹴り、ヒザ蹴りでラッシュをかけて越智を本戦5-0で下した。
今年5月の第1回JFKO国際大会軽重量級決勝戦の再戦となった加藤大喜と島本一二三の準々決勝は、本戦で決着がつかず延長戦へ突入。打ち合いから放った加藤の右内廻し蹴りが島本の頭部をとらえ、技有り。5月に続いて加藤が島本を返り討ちにした。
一昨年、昨年と2年連続で全日本大会3位入賞をはたし、今大会で悲願の初優勝を狙う前田勝汰は、第6回世界ウエイト制軽量級王者の岡﨑陽孝を迎え撃った。だが、開始早々に前田が顔面殴打の反則を取られると、続けざまに2度目の顔面殴打で前田に減点1。その後は突きとヒザ蹴りで盛り返した前田だったが、減点が響き本戦5-0で岡﨑に軍配。四回戦で敗北を喫した入来に続き、優勝候補の一角だった前田が準々決勝で姿を消した。
波乱が続く中、江口雄智との準々決勝に臨んだ島本雄二は盤石の試合運びを見せた。左の中段廻し蹴りが江口の腹部をとらえると、ジリジリと距離を詰めて突きの連打でペースを握り、本戦5-0で完勝。準決勝に進出した山本、加藤、岡﨑、島本の4名が、第12回世界大会の代表権を手にすることとなった。
【男子準決勝戦】
リトアニアで行なわれた第5回世界ウエイト制大会以来、5年半ぶりの顔合わせとなった山本和也と加藤大喜の一戦は、ともに変幻自在の足技を繰り出し目まぐるしい攻防を見せる。途中、山本の上段ヒザ蹴りが加藤の顔面をとらえると、3度目の上段ヒザで山本が技有りを奪い、本戦5-0で勝利。山本が初の全日本大会ファイナル進出を決めた。
重量級と軽量級の世界王者対決となった島本雄二と岡﨑陽孝の準決勝第2試合は、距離を詰めた島本が突き、下段廻し蹴り、前蹴りで岡﨑を場外へ押し出す。岡﨑の突きの連打と下段蹴りで応戦したものの、島本の優位は動かず本戦5-0で島本に軍配。島本が大会連覇へ王手をかけた。
【男子3位決定戦】
加藤大喜と岡﨑陽孝の3位決定戦は、右の下段廻し蹴りからの下段カカト蹴りを決めた加藤が技有りを奪い、本戦5-0で完勝。加藤は6大会連続の入賞となる3位、岡﨑は初の4位入賞をはたした。
【男子決勝戦】
50回記念大会のファイナルは、島本雄二と山本和也が激突。両者は昨年の第49回全日本大会の準々決勝でも対戦しており、その時は島本が勝利を収めている。本戦は島本が突きの連打と下段蹴り、ヒザ蹴りでやや優勢となり、中盤には前蹴りで押し込む場面も見られたが、ラスト30秒を迎えると山本が怒涛の反撃を見せる。突きの連打とヒザ蹴りで一気呵成にラッシュをかけ、対する島本は前蹴りやヒザ蹴りで応戦。本戦は島本に1本の旗が上がり、勝負は延長戦へ。島本は左の下段廻し蹴りと右の下突きを連打すると、突きのワンツーから左の下段廻し蹴りへつなぐコンビネーションで優位となり、島本が判定5-0で勝利。大会連覇を飾るとともに、第44回、第46回、第49回に続いて4度目の全日本大会制覇をはたした。大目標に掲げる世界大会連覇へ向け、最高の形でスタートを切った。
【女子準々決勝戦】
久保田千尋と加藤小也香の一戦は、突きと内股蹴りで加藤を押し込んだ久保田が延長5-0で勝利。第45回、第46回全日本大会で2連敗を喫していた加藤にリベンジをはたした。
浅古麗美は石原凜々の懐に入って得意の接近戦に持ち込むが、石原はヒザ蹴りと前蹴りで距離を取る。終盤に入ると石原が下突き、ヒザ蹴り、前蹴りでラッシュをかけ、判定5-0で準決勝進出をはたした。
初日に佐藤弥沙希を破る大金星を挙げた目代結菜は、全日本大会で2度の準優勝がある菊川結衣と対戦。本戦は互角の攻防を繰り広げたが、延長に入ると目代の手数が減り、菊川が判定4-0で勝利を収めた。
前回女王の南原朱里は、第1回JFKO国際大会軽量級王者の水谷恋と激闘を展開する。本戦、延長、再延長、体重判定でも決着がつかず、迎えた最終延長。突き、下段蹴り、ヒザ蹴りをヒットさせた南原が、判定5-0で辛くもベスト4入りを決めた。
【女子準決勝戦】
準決勝第1試合は、石原凜々が前回大会準優勝の久保田千尋に挑んだ。突きと下段蹴りで圧力をかける久保田に対し、石原は突きとヒザ蹴りで応戦。本戦0-0で迎えた延長戦は、久保田が突き連打から下段蹴りで優勢となり、判定5-0で久保田に軍配が上がった。
もうひとつの準決勝は、第11回世界大会準決勝以来となる南原朱里と菊川結衣の顔合わせが実現。本戦0-0、延長戦は南原に2本の旗が上がるも、勝負は再延長戦へ突入する。接近して突きを打ち合う展開となったが、南原が手数でやや優勢となる。菊川に押し2つの減点1も重なり、南原が4-0で勝利。この2試合の結果、久保田と南原が第12回世界大会の代表権を獲得した。
【女子3位決定戦】
石原凜々と菊川結衣の3位決定戦は、本戦終盤に突きの連打からヒザへつないだ石原が攻勢にまわり、判定5-0で勝利。石原は初の3位入賞をはたした。
【女子決勝戦】
昨年の第49回大会決勝戦に続き、久保田千尋と南原朱里がふたたび全日本の決勝戦で雌雄を決することとなった。突き、下段蹴り、下段ヒザ蹴りを繰り出す南原に対し、久保田は突きと下段蹴りで応戦。互いに一歩も引かず、至近距離での打ち合いが続いた。終盤に入ると久保田が技の回転を上げて勝負に出る。南原は手数が減って劣勢となり、本戦4-0で久保田が勝利。久保田は昨年のリベンジをはたすとともに、悲願の初優勝を飾った。また、半世紀の歴史の中でこれが初の他流派選手の優勝となった。
男子
優 勝 島本雄二(広島支部)
準優勝 山本和也(東京東支部)
第3位 加藤大喜(愛知山本道場)
第4位 岡﨑陽孝(千葉南支部)
第5位 前田勝汰(和歌山支部)
第6位 江口雄智(福岡支部)
第7位 島本一二三(広島支部)
第8位 越智純貴(沖縄支部)
敢闘賞 岡﨑陽孝(千葉南支部)
技能賞 越智純貴(沖縄支部)
試割賞 島本雄二(広島支部) 20枚
落合光星(和歌山支部)20枚
女子
優 勝 久保田千尋(久保田道場)
準優勝 南原朱里(福岡支部)
第3位 石原凜々(岡山東支部)
第4位 菊川結衣(芦原会館)
敢闘賞 目代結菜(東京城南川崎支部)
技能賞 石原凜々(岡山東支部)
【男女入賞者】
【第12回世界大会 日本代表】
■テレビ放送
テレビ東京系列6局ネット 10月21日(日)16:00~17:15
J SPORTS2 10月28日(日)20:00~22:00