歴代最多の全日本V5を誇る塚本支部長に、 世界大会後の傾向やエースの条件を聞いた。 武道家としての心構えが試される今大会で、 塚本イズムを継承する選手は現われるのか。
――コロナ禍の今年、全日本大会が開催される意義をどうお考えですか。
「ふたつあると思うんです。全国大会だけはどんなことがあっても開催しようという師範方の思い。もうひとつ、選手たちは武道家ですから、極端なことを言えば戦時中であろうが病気が流行っていようが、病室でスクワットをされている鈴木国博先輩のように、どんな状況でも自分の心技体を向上させなければいけません。それを確認できるいいチャンスですよね。こういう状況で誰が一番準備できているか、つねに準備を怠っていないかという順位をつけたほうがいいと思います」
――大会があることで、日々の稽古にもさらに力が入るでしょうね。
「しっかり空手に打ち込んでいる選手と、そうでない選手の差が出るでしょうね。特別なことをする必要はないですが、いつもと同じように命がけでやってきたのか。命がけの稽古をしなければチャンピオンになれませんから、コロナであろうがやらなければいけないんです」
――今大会の男子は、世界大会2連覇の島本雄二選手が不在です。ここで優勝した選手が日本の新エースと言って差し支えありませんか。
「いいと思います。今まさに、新時代へ突入するところですよ。自分と国博先輩と塚越(孝行)支部長の時代があり、それが終わってからは島本雄二選手の1強でしたよね。今回は各選手が『島本チャンピオンに取って代わるのは俺だ』と考えているでしょうし、群雄割拠でおもしろいです。世界大会翌年の全日本は、大番狂わせが起きるというジンクスもありますから」
――組織の刷新があった第6回世界大会以降、世界大会の翌年に行なわれた全日本大会の男子は、すべて初優勝というデータが残っています。
「世界大会が挟まる分、全日本をひとつ飛ばすことになりますよね。世界大会に出ている日本人選手の多くは外国人としか闘っておらず、日本人同士の対戦は少ないです。実質、無差別では2年ぶりに日本人と闘うことになるので、どのくらい変わっているかがわからないんです」
――力関係が読みにくく、いきなり台頭する選手もいると。
「1年ぶりであれば、だいたいこのくらい強くなっているだろうという予測ができますが、2年ぶりですから。ましてや今年はJFKO全日本大会がなかったので、よりわからないですよね」
――今回はコロナの影響もあり、出場を見送った新極真会の主力選手もいます。その反面、他流派はオールスター級のメンバーが揃いました。
「雄二選手だけではなく、前田勝汰選手もいないですからね。第6回世界ウエイト制の世界チャンピオンがふたりいない。そんな大会はそうそうないですよ。今までで一番と言えるくらい、他流派の選手たちも強くなってきていますし」
――王座を守れるかもテーマですね。男子の注目選手を教えてください。
「本命どころでは加藤大喜選手、江口雄智選手、入来建武選手。大喜選手は技が切れますし、体も大きいほうですし、つねに倒そうとしていて、スター性を持っています。たとえ控室にいても、大喜選手の試合が始まる時は見に行きますから。試合を見たいと思わせてくれるような選手ですよね」
――最高の誉め言葉ですね。
「少し前の大喜選手は、だった91kg時がありました。あのスピード、あの動きで91kgなんて、信じられません。仮に、他の格闘技の試合に出ても通用するだろうと思わせるすごさがあります。だからこそ、ここを逃がしたら後はないという気持ちでやってもらいたいです。それくらい期待しています」
――その他の男子注目選手も教えてください。
「江口雄智選手ですね。確実に強くなっています。試合の運び方や攻撃のまとめ方もすごくよくなっていますし、自分が見ている限り心も安定しています。顔つきを見ても、自分から苦しいほうを選んで生活しているんだろうなというのが伝わってきますよね。前は福岡支部の一員という感じでしたけど、今はリーダーとして支部をけん引していることが見て取れます。それが彼を強くしていると思うので、優勝する可能性はおおいにあると思います。今回、福岡支部勢は男子も女子も、いつにも増して強いと思います。コロナ禍でも変わらない緑代表の前向きでポジティブな姿勢。その意識の高さを選手たちも肌で感じ、お手本にしているでしょうから、今までで一番というくらい仕上げてくると思います」
――なるほど。
「そして入来建武選手。今大会の男子では唯一、全日本王座を獲っている選手ですし、ポテンシャルは抜群です。普通に考えれば、誰が見ても優勝候補ですよ。ただ、最近はあまり結果がついてきていません。フィジカルが整っていないからメンタルにきているのか、その逆なのか。名門の東京城南川崎支部を率いる選手ですし、みんなの期待が大きい分いろいろと考えたり、重圧があるのかもしれません。自分も現役時代に勝てない時期があったのでわかりますが、周囲の期待を背負うのではなく、自分が勝ったら喜んでくれる人がこれだけいるんだというポジティブな思考に変換することが大切だと思います。新世代で期待したいのは、鳥原隆司選手、渡辺優作選手、三上和久選手あたりですね。若い力でトーナメントをかき回してほしいです」
――塚本支部長は第6回世界大会チャンピオンとして臨んだ第回全日本大会で初優勝し、連覇を達成しています。エースの自覚が芽生えたのはいつ頃でしたか。
「世界大会で優勝した時からですね。1年後の第回全日本大会は組織が分裂して間もない頃で、ふたつある全日本大会のうち、我々のほうはあまり観客が入っていなかったんです。会場を見回して、いつかここを満員にしてやるぞと決意したことを覚えています。その気持ちがエースだと思うんですよ。他の格闘技よりも、空手のほうが絶対おもしろいと思わせてやると考えている選手がエースになるのではないでしょうか。他の格闘技の選手も全日本大会の映像を見ると思いますが、『やっぱり無差別の全日本はとんでもないな』と度肝を抜かせる試合をしてほしいです。自分たちもそういうプライドを持って闘っていましたから」
――エースとはどんな存在ですか。
「簡単なことです。一番強い人間。そして勝ち続けることです」
――今大会は無観客で行なわれ、セコンドも1名に限定されます。例年とは異なるシチュエーションですが、勝敗に影響を及ぼすことはありませんか。
「1ミリも関係ありません。結局は、強いものが勝つんです。私は空手の中で1番になりたいと思っている選手の1番を見たいのではなく、あらゆる格闘技の頂点に立つのは空手だという気概を持ち、地上最強と言えるくらい命がけで稽古をした人間の1番が見たいです」
東日本大震災復興支援チャリティー/骨髄バンクチャリティ-
第52回オ-プント-ナメント全日本空手道選手権大会
開催日 : 2020年11月21日(土)・22日(日)
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※選手には無料チケットを配布します。セコンドへのチケット配布はありません。
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