12月24日～25日の2日間にわたり、第54回全日本空手道選手権大会が東京・国立代々木競技場第二体育館で開催されている。昨年はドリームフェスティバルとの併催、ワンデイトーナメントという形で行なわれたが、今年は例年通り2日制で実施。聖なる夜に男女100名を超える強豪選手が集結した。ここでは有力シード選手の闘いを中心に、男子の一～二回戦と女子の一～三回戦が行なわれた大会初日（24日）の模様をお届けする。
【男子Aブロック】
前回大会で準優勝の多田成慶が初戦で敗退するという大波乱が起きた。二回戦からの登場となった多田は、井野真孝を本戦5-0で下し勝ち上がってきた藤岡元と対戦。まずまずの立ち上がりに思えたが、藤岡が左下突きを放った直後に左上段ヒザ蹴りを放つと顔面にクリーンヒット。まともにアゴを打ち抜かれた多田は、糸が切れたようにコート上に崩れ落ちた。試合タイムは、わずか19秒。戦慄の一本決着となった。
対抗に位置する空手道MACの後藤優太は、那須翔太から上段前蹴りで技有りを奪う貫録の内容で初戦を突破。2大会連続入賞の力を見せつけた。世界ウエイト制中量級王者の吉澤穂高は、右の下段廻し蹴りでペースを握り藤田春人を本戦4-0で退けた。ポーランドでマシエ・マズールに肉薄した岡田侑己も、多彩な足技を駆使する組手で粘る遠田竜司を延長5-0で振り切った。その他、落合奏太、髙橋扶汰、神原詠二、金岡陽太が勝利を収め最終日へと駒を進めた。
【男子Bブロック】
Ｂブロックは昨年4位の渡辺優作が、得意の後ろ蹴りなどで樋口和真を翻ろう。本戦4-0で勝利し、悲願の初優勝に向け好スタートを切った。前回大会での入来建武との激闘が記憶に新しい多田大祐は、山本和也の積極果敢な攻めに屈することなくヒザ蹴りで形勢を逆転。最後は圧力で上回り、本戦5-0で勝利した。
9年ぶりの王座奪還を目指す落合光星は、左中段廻し蹴りで技有りを奪い本戦5-0で快勝。世界ウエイト制大会中量級で3位に入賞した越智純貴も、小栁一幸を本戦で下し順当に勝ち進んだ。その他では、前平斗真、賀数拓海、片桐大也、若佐建輔が三回戦に進出した。
【男子Cブロック】
このブロックは第6回JFKO全日本大会重量級王者であり、前回大会でも3位に入賞している亀山真がシードの頭に入った。胸筋断裂のケガで世界ウエイト制大会を辞退しているだけに復調具合が懸念されたが、本戦終了間際に左上段廻し蹴りで一本を奪取。再起戦を圧巻の内容で飾ってみせた。
対抗に座った前回大会7位の芦高侑平は、得意の右下段廻し蹴りを軸とする組手で延長戦を制圧。堀之内陽逞も粘りを見せたが、あと一歩及ばなかった。鳥原隆司は体格で上回る佐藤悠槇に対し、横に回りながらの下段廻し蹴りでペースを握り本戦5-0で勝利。上位進出が予想された渡辺和志は欠場となり、初戦で井上達二を破った多田耀成が初日を突破した。その他、湯川智仁、石野源太郎、緑武士、後迫龍輝が最終日に駒を進めている。
【男子Dブロック】
このブロックの注目は、何と言っても大会3連覇がかかる入来建武。最終ゼッケンを背負い、昭武館の稲森優昂を迎え撃った。試合開始直後から積極的に攻め込む稲森に対し、入来は重い下段廻し蹴りと中段突きで迎撃。終始、安定した組手を見せたディフェンディングチャンピオンが、順当に初戦をクリアした。
復活を期す加藤大喜は塚本慶次郎の攻めを正面から受け止め、その上で突きの連打で反撃。場外に押し出す場面をつくるなど圧力で上回り、本戦4-0で勝利した。他流派の雄である髙橋佑汰は、下段回り蹴りで果敢に攻め込む古本翔基の一瞬の隙をつき胴廻し回転蹴りで一本を奪取。衝撃のフィニッシュで初日を締めくくった。同じく他流派の重鎮とも言える重松翔は、堀江俊明との下突きと下段廻し蹴りの打ち合いを制し本戦4-0で勝利した。その他、大坪裕希、鈴木皓大、江口雄智、野邑一心の新極真会勢が三回戦へと駒を進めてみせた。
【女子Aブロック】
このブロックの中心は、前回大会で初出場ながら準優勝に輝いた鈴木未紘。1年越しのリベンジをはたすため、今年も驚異的なペースで試合をこなしてきた。初戦を不戦勝で勝ち上がると、三回戦で鈴木愛心と対戦。ヒザ蹴りではなく左下段廻し蹴りを軸とする組手でペースを握り、本戦5-0で勝利を収めた。
前回大会3位の水谷恋も好スタートを切った。初戦は村林千紘の粘りにあったものの、延長5-0で順当に勝利。続く三回戦も延長戦にもつれ込む接戦となったが、回転の速い突きで次第にペースを手繰り寄せ、世界ウエイト制大会で軽量級を制した宇都宮美咲との一戦をクリアした。優勝候補の一角と言っても過言ではない渡辺小春は、初戦の細谷誉戦を延長5-0で突破すると三回戦で本領を発揮。強烈な左下段廻し蹴りで小嶋夏鈴の攻めを封じ込め、本戦5-0で勝利した。Ａブロックの残り一枠は、ノーシードながらJFKO全日本大会などで輝かしい実績を残す浅古麗美が勝ち取った。小泉結菜との初戦を本戦3-0で乗り切ると、三回戦では手島海咲を破り勝ち上がってきた村上莉菜を突きと下段回り蹴りで翻ろう。危なげのない形で、ベスト8に進出した。
【女子Bブロック】
前人未到の3連覇を成し遂げた久保田千尋が、今年もディフェンディングチャンピオンとして参戦。初戦で漢藍理を破り勝ち上がってきた伊藤煌彩を迎え撃った。積極的に突きを繰り出す伊藤に対し、久保田も重い右下段廻し蹴りと突きで応戦。最後までペースを譲ることなく、本戦5-0で勝負を決めた。続く三回戦も前河凜花のヒザ蹴りを見極め、突きと下段廻し蹴りでペースを掌握。ここも本戦5-0でクリアし、絶対女王としての威厳を見せつけた。
悲願の初優勝を目指す目代結菜は、初戦で新進気鋭の富田藍海の粘りにあったものの、続く三回戦でも網川来夢との熱戦を制し最終日に進出。女子の第一人者としての意地を見せた。あと一歩のところで足踏み状態が続いている野邑心菜は、復調を感じさせる組手を披露した。左下突きなどで初戦を難なく突破すると、三回戦でも突きとヒザ蹴りで圧力勝ち。石野まことを破り勢いに乗っていた黒田蒼を寄せつけず、文句なしの完勝を収めた。第46回全日本大会以来、2度目の優勝を狙う加藤小也香は、熟練の足運びで細谷希花、梅澤彩音を圧倒。期待の新鋭2人をともに本戦5-0で退け、堂々のベスト8進出をはたした。
第54回全日本空手道選手権大会はスポーツ振興基金助成事業です
