第13回世界大会が終わり、ここからまた新たな時代がスタートする。男子は全日本大会3連覇ののちに世界王者に輝いた入来建武が引退。岡田侑己がKCC王者に輝いたものの、今大会は誰が勝っても初優勝となるため、混戦が予想される。女子は世界大会&KCC女王の鈴木未紘という絶対的な存在が君臨しているため、彼女をストップする選手が現われるのかが焦点となるだろう。そこに虎視眈々と王座を狙う他流派勢や海外勢も加わり、誰が勝ってもおかしくないハイレベルなトーナメントが形成された。日本最高峰の舞台で頂点に立ち、新時代をけん引するエースは誰なのか。初開催となる型部門の初代王座の行方も含め、注目の闘いが始まろうとしている ー。
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目次
男子注目選手
新エースを巡る闘いは、まさに混沌
入来建武からバトンを引き継ぐのは !?
世界大会の翌年は波乱が起こると言われるが、今年はいつにも増して優勝予想が困難な大会だ。
男子はエースとして空手母国・日本を牽引した入来建武だけではなく、最前線で屋台骨を支えた落合光星、加藤大喜、亀山真らが第13回世界大会をもって現役を引退。空手 Champion of Champions(KCC)で岡田侑己が頭ひとつ抜け出したものの、新エースを巡る争いはまだ始まったばかりだ。
混迷を極める今大会で四隅のシードを形成するのは、当然ながら過去の入賞歴を考慮した上で選ばれた実績上位組。KCCを制した岡田が栄えある最終ゼッケンを背負い、対抗には再起を図る渡辺優作が名を連ねた。
もう二枠を勝ち取ったのは第53回全日本大会準優勝や JFKO 全日本大会軽重量級連覇の実績が光る多田成慶と、第13回世界大会で7位入賞をはたした遠田竜司。トーナメントの混沌ぶりを象徴するように、今回はシード選手に限らず誰が優勝しても全日本初戴冠となる。ここでは各ブロックに点在する四隅の選手以外の有
力選手を取り上げてみたい。
A ブロック
A ブロックでまず目につくのは、5月の全ヨーロッパ大会軽重量級を制したダヴィット・ムスカラゼ。各主要大会の入賞の常連で、第7回世界ウエイト制大会でも男子中量級で3位に食い込んでいる。昨年末の Kokoro Cup ではマシエ・マズールを瀬戸際まで追い込んでおり、階級アップと比例して戦績、試合内容ともに状態は上向きだ。
2016年、2017年と過去に2度、3位入賞をはたしている前田勝汰も、優勝争いを占う上で見逃せない存在だ。世界大会で負ったケガの影響で今年のJFKO全日本大会は回避したが、爆発的な攻撃力はいまだ健在。コンディションさえ整えば、ブロック突破の最右翼と言っても過言ではない。
その他にも田中裕也、澤井天心、前平斗真、平木楓、古本翔基など一発逆転の力を秘めた選手が多く名を連ねている。再起を図る渡辺にとっても、初戦から気の抜けないトーナメントになることは間違いない。
B ブロック
B ブロックは、マズールの状態次第と言えるかもしれない。世界大会&世界ウエイト制準Vなど実績では出場選手随一のものがあるが、懸念材料となるのが試合序盤の試合運び。スロースターターであるがゆえに、仮にここ数大会と同様の戦略を用いるのであれば他の選手にも付け入る隙はあるだろう。
その一番手として期待されるのが、JFKO全日本大会の中量級で3位入賞をはたし第1回WFKO 世界大会の切符を手にした塚本慶次郎。後迫龍輝を破っての日本代表入りという事実が、彼の非凡な才能を端的に言い表わしている。群馬県大会、佐賀筑後大会などで地道に実績を積み重ね、大舞台でついに秘めた能力を開花させた18歳の前途は洋洋と言って差し支えないだろう。
多田が控えるブロックでは、第54回大会7位の𠮷澤穂高が虎視眈々と上位進出を狙っている。
ライバル視する多田とのマッチアップを実現させて、前回大会と同様に入賞を確定させたいところだ。
C ブロック
C ブロックの鍵を握るのは、前回大会準優勝の後藤優太だろう。フィジカルを含めたポテンシャルでは他を圧倒するが、ここ2年ほどはかつての勢いが鳴りを潜めている。ただ、本来の組手を発揮することさえできれば、二日目進出の可能性はかなり高い。
とはいえマレック・ヴォルニーと鳥原隆司も、全日本大会での入賞経験を持つ実力派だ。同じく入賞実績を持つ芦髙侑平、後迫やJFKO全日本大会軽中量級で2年連続準 V に輝いている大坪裕希らの動向とともに、初日から片時も目が離せそうにない。
D ブロック
D ブロックも、他と同様に有力選手の名前が目立つ。ストップ・ザ・岡田の一番手となるのが5月の JFKO 全日本大会で軽重量級を制した金岡陽大で、20歳ながら第1回 WFKO 世界大会と合わせて3度の日本代表経験を持つ有望株だ。岡田自身が世界大会で化けたように、初の全日本タイトル獲得でさらなる飛躍が見込まれ
る。
第7回JFKO全日本大会軽重量級ファイナリストの渡辺和志も当然ながらブロック突破の可能性を秘めている。無尽蔵のスタミナから繰り出される中段突きのラッシュは驚異的で、その実力は四隅のシード選手と比べても見劣りしないものがある。入来に続く新エースを決める大会で、長年の悲願でもある兄・優作との兄弟対決を実現させたいところだ。
コロナ禍の時期にやや状態を落としていた江口雄智も、第8回 JFKO 全日本大会以降は以前の輝きを取り戻しつつある。本来であれば四隅に配置されていてもおかしくない選手だけに、持ち前の推進力で他を圧倒したい。金岡と同様に将来を嘱望されている鈴木皓大も、今大会をきっかけにトップグループ入りをはたしたい。現状では善戦止まりとなっているが、潜在能力の高さは誰しもが認めるところ。
初戦から土橋立弥と拳を合わせる厳しい組合せとなるが、スケールの大きな組手でまずは他流派の侵攻阻止を遂行したい。
このブロックは他にも次ページで取り上げる髙橋耕介、サミュエル・ハラス、藤田春人、髙橋佑汰と有力どころが目白押しだ。KCCを制し波に乗る岡田とはいえ、確実に二日目に残るとは断言できない状況だ。
はたして冒頭で触れた「世界大会の翌年は波乱が起こる」というジンクスは、今大会にも当てはまるのか。新エースの座をかけた頂上決戦であることから、A~Dブロックとも例年以上に初日から緊張感のある攻防が繰り広げられることになりそうだ。
各ブロックに満遍なく有力選手が点在
新進気鋭の10代の若手選手にも注目
前回大会の入賞者8名のうち3名(入来建武、落合光星、加藤大喜)が現役引退を表明。そこに加えて昨年は世界大会が組み込まれたことで、全日本大会は2年ぶりの開催となる。2年という月日は勢力図の変化を促す上では十分な時間であり、ドリームフェスティバルやブロック大会で頭角を現わしたフレッシュな選手が新たに名を連ねるのも世界大会翌年の全日本大会の風物詩だ。上記のような理由から今大会の軸が新エースを巡る闘いとなるのは間違いないとして、10月決戦では世代交代も大きなテーマとなる。よって、この項では今大会での注目選手だけにとどまらず、今後、開花することが予想される次世代の有望株についても軽く触れてみたい。
A ブロック
A ブロックでは、まず堀江俊明と手島一翔の初戦に注目が集まる。コンスタントに結果を残すことはできていないが、堀江はアジアフルコンタクト選手権で日本代表に選出され、第8回JFKO 全日本大会では自身の殻を打ち破りベスト8に進出している。まだ年齢的にも伸びしろがあることから、前回大会で髙見澤麟を一発
KO(胴廻し回転蹴り)したような衝撃を今大会でも再現したい。
手島も第7回世界ウエイト制大会で日の丸を背負い、日本の王座死守に貢献した軽量級の雄だ。澤井天心、前平斗真と軽中量級以下の実力派が固まったゼッケン5~8の山は、優勝争いとは違う観点で捉えても非常に興味深い。
白蓮会館の平木楓も、軽中量級とはいえ侮れない存在だ。5月の JFKO 全日本大会ではアクシデントにより連覇を逃したが、第13回世界大会ではアリ・ハイデルら外国人3選手を下し五回戦に進出するなど無差別級でも一定の結果を残している。8月に名古屋で開催された全中部大会でも、無差別級を想定したヒット&アウェーを駆使した組手で圧勝を収めており、三回戦で当たる可能性がある前田勝汰との試合は注目に値する好カードだ。
Bブロック
Bブロックはマシエ・マズールに挑む落合奏太に加えて、今回は全日本大会初出場となる16歳の井上龍成にも目を向けてみたい。技術、フィジカルともに発展途上の段階ではあるが、5月の JFKO 全日本大会では軽中量級ベスト8と大健闘を見せた。塚本慶次郎との一戦を介すことで、2019年にドリームフェスティバル初
出場初優勝(小学6年生男子中量級)をはたしたホープの現在地が推し量れることだろう。
また同ブロックには片桐大也、早川羅偉など、力を持った他流派の選手が点在する。いまだ流出していない男子の全日本タイトルを死守する意味でも山内慎太、野邑一心、長嶋航平、志村朱々璃らの奮起にも期待したい。
Cブロック
Cブロックも粒ぞろいのメンバーが揃った。順当に予想すれば世界大会で殻を破った遠田竜司と、前回大会準優勝の後藤優太の争いになるのだろうが、そこに至るまでの障壁はかなり分厚い。
まず遠田のブロックで言うと、すぐ横の山に第53回大会7位の芦髙侑平が陣取り、その後も後迫龍輝や大坪裕希などが控えている。勢いでは遠田に分があるが、好事魔多しも空手の常だけに予想は容易ではない。あと一歩のところでWFKO世界大会出場を逃がした後迫が相当な思いを持って今大会に臨んでくるのは確実で、
そのあたりの心の機微も注目ポイントとなるだろう。
また後藤のブロックには KCC 代表であり全ヨーロッパ大会軽重量級王者のマレック・ヴォルニー、そして前回大会3位の鳥原隆司が待ち構えている。徹底マークを受ける遠田と後藤が、いかにして包囲網をかいくぐりCブロックを通過してみせるのか。興味は尽きない。
次世代という意味では山地悠斗、芝山かずや、後藤光乃介の10代トリオもおもしろい存在だ。ドリームフェスティバル、ブロック大会で優勝を重ねる山地、福岡支部に移籍し奄美大会で即結果を出した芝山、東北大会王者の後藤と、3年後の世界大会を見据える上でも楽しみなブロックと言えるだろう。
D ブロック
D ブロックは金岡陽大のブロックに若手選手、岡田侑己のブロックに実績組がそろった印象だ。金岡側で注目したいのは、こちらもドリームフェスティバル、ブロック大会等で結果を残す古庄正樹、髙橋耕介、北嶋治将の3選手。同じ10代として遠田の独走を許すわけにもいかず、今大会にかける思いは強いものがあるに違いない。若いとはいえ、もう経験を積むという段階ではないだけに、今大会を皮切りに世代交代の機運をさらに高めるような結果を残したい。端に位置するサミュエル・ハラスも不気味な存在だ。直近の全ヨーロッパ大会だけではなく全四国大会、全北海道大会、東京都大会でも実力は証明済みで、長期間にわたる福岡支部への留学で日進月歩の成長を遂げている。全日本大会でも、トーナメント全体をかき回すような台
風の目となりそうだ。
反対ブロックも初日から目が離せない試合が続く。中でも藤田春人と髙橋佑汰の一戦は、一本決着につながるような上段系の大技が飛び交う可能性も十分ある。少なくとも一撃必殺の空手の醍醐味が詰まった熱戦になることは確実だろう。
江口雄智と那須翔太も通好みの一戦だ。全関東大会優勝以降もやや足踏み状態が続いているとはいえ、入来建武が関東合同強化稽古で手合わせして最もやりにくさを感じたのが那須だという。「世界大会出場を目指す」と公言しているだけに、今大会でまずはトップグループとの差を詰めたいところだ。実力伯仲の今大会は、初日から予期せぬアップセットが起こる可能性も十分ある。3年後の世界大会を占う上でも、見逃せない大会となりそうだ。
女子注目選手
着々と築かれつつある絶対女王包囲網
世界大会翌年のジンクスは—!?
新エースを巡る闘いが軸となる男子に対し、女子は頂点を目指すまでの構図がはっきりしている。現状では第54回全日本大会、第8回JFKO全日本大会軽重量級、第13回世界大会、第9回 JFKO 全日本大会重量級、第1回空手Champion of Champions(KCC)を制している鈴木未紘がぶっちぎりの優勝候補で、そこに待ったをかける選手は誰かというのが最大の見どころだ。
上記の戦績を見てもわかる通り、絶対女王を前にして付け入る隙を見つけるのは容易ではない。形としては鈴木が全日本初戴冠に成功した、
2022年の第54回大会に似ているのかもしれない。
当時、女子選手のトップに君臨していたのは久保田千尋で、全日本大会3連覇と盤石の態勢を築いていた。それもあって第54回大会の見どころは「新極真会が王座奪還できるのか。それとも絶対女王の前人未到の4連覇か」というもの。結果的に鈴木が涙の初戴冠をはたし絶対女王の称号を引き継ぐ流れとなったが、今回は
自力で時代を引き寄せたその鈴木を倒すのは誰かが最大のテーマとなっている。
連覇阻止の最右翼となるのは、やはり四隅に配置された網川来夢、目代結菜、藤原桃萌になるだろう。いずれもあと一歩のところで跳ね返されているが、3選手の直近の直接対決は3試合とも延長戦、もしくは最終延長までもつれている。必ずしも一方的ではないだけに、この4選手が絡むカードが実現すれば旗が挙がるその
瞬間までシーソーゲームを堪能することができそうだ。
第13回世界大会で自身の殻を打ち破った網川は、JFKO 全日本大会、KCCでも入賞をはたすなど安定感が格段に増した。以前のような脆さは消え去り、今ではトップ選手としての風格さえ漂わせるようになった。第7回世界ウエイト制大会軽量級準優勝の小嶋夏鈴、第7回JFKO 全日本大会軽中量級優勝の石野まこと、第7回世界ウエイト制大会中量級優勝の冨村日花といった有力選手が待ち構えるブロックとなるが、初日突破の可能性はかなり高い。
出場したほぼすべての大会で入賞をはたしている目代も、絶対女王を引きずり下ろすだけの力を持っている。KCCは減点が響き初戦敗退となったが、内容自体は第7回世界ウエイト制大会重量級王者のブリジタ・グスタイタイテを上回っていた。本人が課題として挙げている「気持ちの先走り」を抑えることができれば、決勝戦までの道のりも、よりクリアなものになってくる。
ただ忘れてはならないのが、準々決勝で対戦する可能性がある漢藍理の存在だ。世界大会では全ヨーロッパ大会重量級王者のマリヤ・セクンダと久保田を止め、JFKO 全日本大会も含めて、ここ数大会の敗戦は僅差の判定(延長戦か最終延長戦)のみ。シードを抑えて A ブロックを突破したとしても、それはアップセットではなく順当と表現して差し支えないだろう。
漢と目代が座る山では世界ウエイト制大会軽量級王者の宇都宮美咲と、JFKO 青少年大会連覇の細谷誉という好カードも組まれている。ワンマッチ的な視点で見ても、非常に楽しみなブロックだ。
そして鈴木の牙城を崩す最右翼と言えるのが、ケガからの復帰以降に驚異的なV字回復を見
せている藤原だろう。直近の KCC でも絶対女王と最終延長にもつれ込む激戦を展開し、ベテランの域に差し掛かっても大会ごとに上積みを感じさせている。前十字靭帯断裂前の第52回大会は延長戦での失速が響き判定負けを喫したが、今の藤原にスタミナ面での不安はない。
一方で同じブロックに配置された児玉亜瑞、澤井ナノ、漢鈴那などは、その第52回大会での水谷恋の闘いぶりを参考にしたいところだ。
圧力に屈することなく手数で上回ることができれば、アップセットの可能性も見えてくる。
最後の山の一回戦は、順当に考えれば水谷、井上ほの花、漢由依奈が実績面でも頭ひとつ抜けている。無尽蔵のスタミナを誇る水谷は無差別級の闘いも苦にせず、世界大会ベスト8、全日本大会入賞2回(第52回大会4位、第53回大会3位)など堂々の戦績を誇る。久保田、浅古麗美といった名前がない中で、新極真会が最も
警戒すべき他流派の選手と言えるだろう。
その水谷と二回戦で当たる可能性のある井上の覚醒にも期待したい。世界ウエイト制大会中量級3位と結果を残しながら、それ以降は周囲の期待以上の成績を残しているとは言い難い。
本人もドリームフェスティバルU25女子19-25未満軽量級優勝、JFKO 全日本大会中量級3位
という結果では満足しないはず。全日本大会の結果で、同門の目代との差を詰めたいところだ。
漢姉妹の長女である由依奈も、おもしろい存在だ。昨年2月までは藍理に黒星をつけ続け、今年の JFKO 全日本大会中量級で準優勝に輝いた鈴那には、まだ白星を許していない。三段論法は無意味とはいえ、その実力は推して知るべし。二回戦で鈴木との一騎打ちが実現すれば、周囲からの評価が一変する可能性も十分だ。三姉妹では唯一、来年5月に開催される WFKO世界大会の切符を逃がしているだけに、全日本大会にかける思いは並々ならぬものがあるだろう。
これまでに挙げた選手以外にも、流派問わず実力を兼ね備えた選手が各ブロックに点在する。前述の久保田、浅古の他、加藤小也香、野邑心菜らの名前はないが、今大会も王座を巡る闘いがハイレベルであることは間違いない。
はたして男子の項でも述べた「世界大会の翌年は波乱が起こる」は、女子のトーナメントにも当てはまるのだろうか。少なくとも絶対女王がすんなりと連覇を達成する、というシナリオは考えづらい。
型・男女注目選手
第13回世界大会とは指定型が微妙に変化
初代全日本王者を巡る闘いは予測不能
全日本大会の部門導入が決まったことで、組手同様に型も錬成大会から世界大会へと続くヒエラルキー構造が完成した。明確な目標は当然ながら選手の意識改革を促し、それに伴ってブロック大会などでのエントリー数も増加傾向にある。
導入一発目の今大会には、男女とも世界大会で日の丸を背負った選手だけではなく今後が楽しみな10代の選手も顔を揃えた。ここでは熱戦が予想されるトーナメントの行方を占ってみたい。
男子は今年のドリームフェスティバル(KDF)男子19-30を制した中内功大が最終ゼッケンを背負う。キレ、力強さともに申し分なくKDFの制覇回数は7回。初代全日本王者に最も近い存在と言っていいだろう。とはいえ、対抗に座る田中健太との差は皆無に等しい。昨年の KDF のスコアは2-3で、今年のスコアは3-2。明確な差を言い表わすことは不可能に近く、勝負は文字通り時の運と言えるかもしれない。竹島雅之、志村朱々璃といった代表経験者も控えるが、やはり世界大会入賞のこの2人が決勝戦で雌雄を決する可能性が高い。
女子は世界女王・田中利奈の状態次第か。実績では文句なしの優勝候補だが、今年3月から語学留学のためニュージーランドに移住。稽古が限られた時間内での自主練のみとなっており、それが試合にどう影響を及ぼすかは未知数だ。しかも同ブロックには細谷希花、砂川久美子、入来智羅咲といった強力なメンバーが控えている。まずは十八が指定型となる初戦の動きに注目したい。
逆ブロックは山中咲和と将口恵美が両サイドに配置された。両者は昨年の KDF と今年4月の全四国大会で対戦経験があり、戦績は1勝1敗の五分。全四国大会では将口が得意の観空ではなく五十四歩でリベンジに成功している。見逃せないのが、対戦する可能性がある準決勝戦の指定型が五十四歩であること。型はちょっと
した心の動きが勝敗を分ける要素となるだけに、このあたりがどう勝負に影響を及ぼすのか非常に興味深い。
いずれにせよ、女子は本命不在の混戦模様という表現が一番適しているように思える。今年の全日本大会は、いつも以上に初日から目が離
せない大会となるだろう。