10月5日~6日の2日間にわたり、第56回全日本空手道選手権大会が聖地・東京体育館で開催された。空手母国新時代のエースの座を狙う選手だけではなく、海外や他流派からも強豪が参戦した今大会。組手の男子三回戦~決勝戦、女子準々決勝戦~決勝戦が行なわれた大会決勝日(6日)の模様をお届けする。
【男子三回戦】
渡辺優作はポーランドのヤクブ・テチャを突きで圧倒して本戦5-0で勝利。多田成慶は突きとヒザと下段でアグレッシブに攻撃を仕かけ、水谷翔を下して四回戦進出を決めた。遠田竜司は芦髙侑平との激しい打ち合いを制し、延長5-0で快勝。初代KCC王者の岡田侑己は多彩な蹴りでペースを握り、同い年の江口雄智に本戦5-0で勝利。その他、前平斗真、前田勝汰、古本翔基、落合奏太、塚本慶次郎、𠮷澤穂高、大坪裕希、マレック・ヴォルニー、後藤優太、金岡陽大、渡辺和志が四回戦進出。ジョージアのダヴィット・ムスカラゼは延長2-3で古本に敗れここで姿を消した。
【男子四回戦】
前平斗真と激突した渡辺優作はボディへの下突きと下段廻し蹴りを的確にヒットさせ、本戦5-0でベスト8に進出。前田勝汰は突きの連打で圧力をかけ、古本翔基を本戦4-0で退けた。落合奏太と塚本慶次郎の新世代対決は塚本の胴廻し回転蹴りがさく裂し、鮮やかな一本勝ち。𠮷澤穂高と多田成慶の同い年対決は、延長戦中盤から突きとヒザで攻勢にまわった多田が5-0の判定で勝利を収めた。遠田竜司は左の下段廻し蹴りでペースを握ると、終盤には攻撃の回転を上げて大坪裕希に本戦5-0で完勝。マレック・ヴォルニーと後藤優太の長身対決は本戦終盤に突きとヒザで攻勢にまわった後藤が5-0の判定で準々決勝進出を決めた。金岡陽大と髙橋耕介の一戦は再延長までもつれる激闘の末、髙橋が判定5-0で第9回JFKO全日本の雪辱をはたした。渡辺和志は岡田侑己に対して積極的に突きで前に出るが、押し2回とつかみの反則もあり岡田が本戦5-0で勝利。4隅のシード選手は全員がベスト8へ駒を進めた。
【男子準々決勝戦】
渡辺優作と前田勝汰の一戦は、激しい突きの応酬となった。前田が突きの連打で渡辺を場外へ押し出し、渡辺の減点1も重なり本戦5-0で前田がAブロックの代表決定戦を制した。多田成慶は間合いを取る塚本慶次郎との距離を一気に詰めると、突きで場外まで押し出す場面が何度か見られ本戦5-0で快勝。遠田竜司は本戦終盤に突きの連打でラッシュをかけ、後藤優太に本戦3-0で勝利。第9回JFKO全日本のリベンジに成功した。岡田侑己は突きとヒザを中心に上段への蹴りも織り交ぜ、髙橋耕介を本戦5-0で退けた。
【男子準決勝戦】
前田勝汰と多田成慶の準決勝第1試合は、互いに正拳突きで激しい打ち合いを演じた。試合中盤からカギ突きと下段廻し蹴りでペースを握った多田が前田に本戦5-0で勝利。2度目となる決勝進出をはたした。
これまでと同じようにヒット&アウェーで闘う岡田侑己に対し、遠田竜司は直線的に攻め立てる。岡田にいなす隙を与えず、遠田が突きとヒザで一気に岡田を場外へ押し出した。その後も攻め手を緩めない遠田が、本戦4-0で2年前の第54回大会で敗れた岡田から初勝利を挙げた。
【男子3位決定戦】
間合いを取る岡田侑己に対し、前田勝汰は距離を詰めて突きの連打で優勢に。そのまま前田ペースで試合が進むかに思われた矢先、岡田の胴廻し回転蹴りがクリーンヒットして技有り。岡田が和歌山支部の先輩から初勝利を挙げた。
【男子決勝戦】
多田成慶と遠田竜司がファイナルで対峙。遠田は本戦開始直後から得意の左の蹴りを上・中・下段に散らし、フルスロットルで攻め込む。試合中盤からは多田が右の下段廻し蹴りを中心に盛り返し、判定は多田の2-0。延長に入ると、遠田は左の蹴りで攻め込んだが、徐々に動きが失速。多田は突き、ヒザ、下段廻し蹴りで攻勢にまわる。ラスト20秒からは遠田が残る力を振り絞って攻め込むが、4-0の判定で多田に軍配。多田が初めて全日本王座を手にした。「初めてなのでとてもうれしいです。会場のみなさんの応援や、一緒に稽古してきた仲間たちの支えのおかげで優勝できました。次は5月のWFKO世界大会でがんばります」と笑顔を見せた。
【女子準々決勝戦】
網川来夢は手数を繰り出す渡部はるあを突きとヒザで振り切り、本戦4-0で勝利。漢藍理と目代結菜の一戦は激しく打ち合う好勝負に。サイドステップを使って攻撃を出し続けた目代が手数でやや上回り、3-0の判定で漢に勝利を収めた。藤原桃萌は本戦終盤に体格差を活かした突きとヒザで圧力をかけ、漢鈴那に本戦5-0で完勝。世界女王の鈴木未紘は下突き、ヒザ、下段廻し蹴りを中心に水谷恋を攻め、本戦5-0で勝利。KCC日本代表の4名が順当にベスト4進出を決めた。
【女子準決勝戦】
女子4強による準決勝の2試合は、どちらも死闘となった。網川来夢と目代結菜の3度目の対戦は、本戦0-0、延長0-0、再延長は目代の1-0、体重判定でも決着がつかず、勝負は最終延長へ。ここも互角の打ち合いが展開されたが、目代が4-1の判定で初の決勝行きを決めた。
5月のJFKO全日本、7月のKCCに続いての激突となった藤原桃萌と鈴木未紘の準決勝第2試合は、本戦0-0、延長0-0、再延長は鈴木の2-0、体重判定でも差はつかず、こちらも最終延長へ突入。コート中央で打ち合ったが、やや手数で上回った鈴木が判定4-1で激闘に終止符を打った。
【女子3位決定戦】
網川来夢と藤原桃萌の福岡支部同門対決は、間合いを取る網川に対し藤原は詰めて突きと下段廻し蹴りを繰り出していく。ラスト30秒から技の回転を上げてラッシュをかけた藤原が、本戦5-0で昨年の第13回世界大会で敗れた網川から勝利を収めた。
【女子決勝戦】
昨年の第8回JFKO全日本大会、第13回世界大会に続いての激突となった目代結菜と鈴木未紘による決勝戦。本戦はわずかに手数で上回った鈴木に2本の旗が上がったが、延長は0-0。再延長は左右の下段廻し蹴りで鈴木が攻めれば、終盤に目代が胸への正拳突き連打で反撃し、旗は目代に1本、鈴木に2本。体重判定で差がつかずに突入した最終延長は、下突きと下段廻し蹴りで押した鈴木が5-0で勝利を収め、大会連覇を達成。試合後の優勝インタビューでは「必ず恩返しをするという強い気持ちで試合をすることができました。これからも結果で恩返しができるようにがんばっていきます。そして、もっともっと強くなります」と決意を語った。
【演武】
準々決勝後には、少年演武とドリームフェスティバル2024で入賞したDream Winnersの紹介が行なわれ、準決勝後には昨日の型部門で入賞した田中健太と田中利奈がそれぞれ五十四歩と観空の型を披露。決勝戦前に行なわれた特別演武では、第13回世界大会組手部門、型部門それぞれのチャンピオンである入来建武参段と渡邊大士四段が演武を披露。ダブルでの征遠鎮に続き、渡邊四段が廻し蹴りで杉板とバットを叩き割った。続いて入来参段は右、左の下段廻し蹴りによるバット折りを成功させた後、エンピによる氷柱割りで氷が真っ二つになると、会場が大歓声に包まれた。
(入賞者)
男子
優 勝:多田成慶(福岡支部)
準優勝:遠田竜司(東京江戸川支部)
第3位:岡田侑己(和歌山支部)
第4位:前田勝汰(和歌山支部)
第5位:塚本慶次郎(世田谷・杉並支部)
第6位:渡辺優作(世田谷・杉並支部)
第7位:後藤優太(空手道MAC)
第8位:髙橋耕介(世田谷・杉並支部)
敢闘賞:落合奏太(栃木支部)
技能賞:塚本慶次郎(世田谷・杉並支部)
女子
優 勝:鈴木未紘(厚木・赤羽支部)
準優勝:目代結菜(東京城南川崎支部)
第3位:藤原桃萌(福岡支部)
第4位:網川来夢(福岡支部)
敢闘賞:漢 藍理(佐賀筑後支部)
技能賞:村上莉菜(大阪東部支部)