10月5日から6日にわたり、第56回全日本空手道選手権大会が東京体育館で開催されている。第13回世界大会の翌年の開催となった今大会には、海外からも精鋭選手が多数参戦。世界大会が開催される4年周期の1年目であり、新たなスタートとなる2024年の全日本大会において、群雄割拠の闘いが繰り広げられた。加えて今回から全日本で型部門がスタートし、初代型・チャンピオン争いも白熱の展開となった。ここでは初代王者が決定した型部門および、組手部門・男子の一~二回戦と女子の一~三回戦のダイジェストをお届けする。
目次
【型部門・男子】
平安5が指定型となった一回戦は、田中健太、瀧本龍ノ介、角野将太、竹島雅之、志村朱々璃、山崎一平、大友伯、中内功大が二回戦進出を決めた。
十八が指定型となった二回戦は、第13回世界大会3位の田中、ドリームフェスティバル2024国際大会高校生王者の角野、第13回世界大会型・日本代表の志村、田中と並んで第13回世界大会で3位入賞をはたした中内が勝ち上がった。
五十四歩が指定型となった準決勝第1試合は、田中と角野が激突。田中が5-0で角野を下し、初戦からオール5-0勝利でファイナル進出を決めた。準決勝第2試合は、志村と中内の顔合わせ。互いに力強い型を見せた好勝負は、1-4で中内に軍配が上がった。
観空が指定型となった決勝戦は、かねてからしのぎを削ってきた田中と中内の闘いとなった。ライバル対決を4-1で制した田中が、栄誉ある初代全日本王者の称号を引き寄せた。
【型部門・女子】
女子も熱い闘いが繰り広げられた。平安5が指定型となった一回戦では谷口亜翠佳、星芽里、佐藤りさこ、入来智羅咲が勝利を収め、二回戦へ進出した。
十八が指定型となった二回戦では、第13回世界大会・型準優勝の山中咲和、第10回世界大会・組手チャンピオンであり、第13回世界大会・型では3位に入賞している将口恵美、第13回世界大会型・日本代表の細谷希花。そして第13回世界大会で初代型・女王となった田中利奈が勝利を手にした。
五十四歩が指定型となった準決勝第1試合では、山中と将口が顔を合わせた。2-3と僅差となったが将口に勝利の女神は微笑んだ。準決勝第2試合では、細谷と田中が激突。田中が磨き抜かれた型で判定5-0を勝ち取り、決勝行きを決めた。
観空が指定型となった決勝では、将口と田中が火花を散らした。勝負は1-4で田中の旗が上がり、世界大会に続く初代女王の座をつかんだ。型部門の入賞者は以下の通り。
型の部結果
■型・男子
優 勝 田中健太(大阪神戸湾岸支部)
準優勝 中内功大(和歌山支部)
第3位 角野将太(和歌山支部)
第3位 志村朱々璃(総本部道場)
■型・女子
優 勝 田中利奈(岡山東支部)
準優勝 将口恵美(徳島北東あわじ支部)
第3位 山中咲和(高知支部)
第3位 細谷希花(埼玉大宮西支部)
組手の部
【組手・男子Aブロック】
ゼッケン1番を背負った第8回JFKO全日本大会重量級王者・渡辺優作は、第1回空手Champion of Champions 3位の雪辱に燃え、今大会に参戦。初戦で石橋昇也と対峙すると、接近戦での下突きが冴えわたる。終盤にギアを上げ、本戦4-0で最終日へ駒を進めた。
渡辺の対抗に陣取ったのは、全ヨーロッパ大会2024軽重量級で優勝実績を持つダヴィット・ムスカラゼ。大橋伊織を本戦5-0で下し、日本での躍進に向け良好なスタートを切った。
第9回JFKO全日本大会で軽中量級を制した前平斗真は、手島一翔と激突。手島のスピードにも柔軟に対応し、本戦5-0で完勝を収めた。
体重別王者たちの活躍は止まらない。平木楓は小森隼人を本戦4-0で下し、2日目への切符を獲得。第8回JFKO全日本大会軽中量級チャンピオンの風格を見せた。
その他、ヤクブ・テチャ、澤井天心、前田勝汰、古本翔基が勝利を収め最終日行きを決めた。
【組手・男子Bブロック】
Bブロックは波乱が起こった。第12回世界大会準Vのマシエ・マズールは落合奏太と対峙すると、金的攻撃と押しにより課された減点1、ギアを上げた落合の猛攻もあり本戦0-5で敗退。値千金の勝ち星を上げた落合が二日目へと駒を進めた。
第53回全日本大会準V、第7・8回JFKO全日本大会軽重量級王者の多田成慶は、初戦で稲森優昂と対戦。熾烈な接近戦は多田の土俵であり、随所で得意のカギ突きを決めて本戦5-0で完勝を収めた。
第9回JFKO全日本大会軽重量級で準優勝と活躍した片桐大也は、野邑一心を相手に下段廻し蹴りで一本を奪取。堂々の内容で三回戦へと歩を進めた。
第7回ウエイト制大会中量級王者の吉澤穂高は、長嶋航平を得意の下段蹴りや攻防のバランスの取れた組手で制圧し、本戦5-0で勝利を収めた。
その他では、山内慎太、塚本慶次郎、早川羅偉、水谷翔が2日目行きの切符を獲得した。
【組手・男子Cブロック】
Cブロックの頭に配置されたのは、第13回世界大会で7位入賞をはたした18歳・遠田竜司。初戦で佐藤悠槇を突破した若武者は、時にはダイナミックな蹴り技を見せるなど観衆を湧かせた。
第53回全日本大会で準優勝の実績を持つ後藤優太は、初戦で立石達也と激突。下突き、下段蹴り、ヒザ蹴りなどで猛攻を仕掛け、本戦5-0で実力者が三回戦へ駒を進めた。
第54回全日本大会8位、第5・7回JFKO全日本大会中量級王者の後迫龍輝も、虎視眈々と上位進出を狙う存在。
神原詠二との対決を本戦4-0で制し、最終日に希望をつなげた。
全ヨーロッパ大会で2度の優勝実績を引っ提げ、ポーランドから参戦したマレック・ヴォルニーは、武藤恵汰を本戦4-0で撃破。伝統の王座を狙い次戦に挑む。Cブロックではその他、芦髙侑平、大坪裕希、深沢優斗、鳥原隆司が最終日行きを決めている。
【組手・男子Dブロック】
ラストゼッケンを背負った第1回KCC王者の岡田侑己は、初戦で圧巻の組手を見せた。髙師亮虎をフットワークや多彩な足技で翻弄すると、下段廻し蹴りと胴廻し回転蹴りで合わせ一本を奪取。鮮やかな組手で会場を魅了し、文句なしの勝ち上がりを見せた。
第9回JFKO全日本大会軽重量級王者の金岡陽大は、初戦で新進気鋭の18歳・古庄正樹と対戦。序盤から激しい打ち合いとなったが、最後はチャンピオンの意地で押し切り勝利をもぎ取った。
デンマークから日本に来日し、福岡支部で長期の武者修行を積んでいるサミュエル・ハラスは、初戦で北嶋治将と激突した。本戦は胸への突きや下段蹴りを軸に攻めた北嶋に旗一本が上がったが、延長では打ち合いを制し4-0で勝利。全ヨーロッパ大会2024中量級準Vの意地を見せた。
第7回JFKO全日本大会軽重量級準Vの渡辺和志は、クリストフ・ヴォルニーと真っ向勝負を展開。相手の激しい連打にも屈せず左右への下突きで攻め立てると、試合は終盤まで突きの応酬となる。最後は渡辺が本戦5-0で押し切り、兄・優作とともに最終日へ挑む。さらには、鈴木皓大、髙橋耕介、髙橋佑汰、江口雄智も勝利を挙げ、三回戦へと歩を進めている。
【組手・女子Aブロック】
女子Aブロックでは、ゼッケン1番を背負った網川来夢が強さを見せた。3位となった第1回空手Champion of Champions(KCC)の雪辱をはたすべく、一回戦で村上莉菜を延長5-0で撃破。二回戦では積極果敢に前に出る小嶋夏鈴を多彩な蹴り技で迎撃し、本戦4-0で最終日への切符をつかんだ。
第7回JFKO全日本大会軽中量級3位の渡部はるあは、石野まこととの初戦を突破すると、二回戦で第7回世界ウエイト制大会女子中量級王者の冨村日花と激突。本戦は0-2で冨村優勢となったが、延長で巻き返すと3-2で勝利を引き寄せた。
第13回世界大会で技能賞獲得、第8回JFKO全日本大会重量級準優勝の漢藍理は、第9回JFKO全日本大会中量級で3位と勢いに乗る18歳・細谷誉と激突。本戦5-0でニューウエーブの勢いを止めた。
国内外で多数の入賞歴を誇り、第53回全日本大会では4位。今大会で悲願のビッグタイトルを狙う目代結菜は、Aブロックのシードとなった。水谷藍との突きの応酬で本領を発揮すると、中盤からギアを上げて本戦5-0で勝利を収めた。
【組手・女子Bブロック】
Bブロックでは、第13回世界大会4位、第1回KCC3位の藤原桃萌の力強さが光った。一回戦の石坂幸香を本戦5-0で突破すると、二回戦では距離を保とうとする澤井ナノに圧力をかけ続け、最後は接近戦で押し切り本戦5-0の勝利を収めた。
第9回JFKO全日本大会中量級で準優勝をはたしている17歳・漢鈴那は若き勢いを見せた。積極果敢に前に出る松田理央を本戦5-0で下し、見事に最終日行きを決めてみせた。
第53回全日本大会3位の水谷恋も幸先の良いスタートを切った。第7回世界ウエイト制大会中量級3位の井上ほの花を本戦5-0で突破し、歴戦の猛者が強さを発揮した。
第13回世界大会、第1回KCCと世界王座を獲得し、全日本大会では2連覇を狙う大本命・鈴木未紘は、初戦で漢由依奈と対峙。突きとヒザ蹴りのコンビネーションはもちろん、終盤は下突きも冴えわたり、盤石の組手で本戦5-0。漢を振り切り最終日へと駒を進めた。