9月24日~25日の2日間にわたり、ポーランド・キエルツェで第7回全世界ウエイト制空手道選手権大会が開催されている。コロナ禍による1年の延期を経ての開催となった今大会には、世界103の国と地域から選抜された178名がエントリーし、男女各4階級ずつに分かれて王座が争われている。大会初日は予選が行なわれ、男子がベスト8、女子はベスト4が決定した。
【女子軽量級】
最終ゼッケンを背負った日本代表女子主将の手島海咲は、初戦となった準々決勝でウクライナのアナスタシア・プリシリアクと対戦。素早い回り込みから突きと下段蹴りで攻勢に回り、本戦3-0で勝利。対抗に入ったウクライナのアロナ・フェレスニアクは将口美希との準々決勝を延長5-0で制してベスト4入り。地元・ポーランドのモニカ・ポドラを破った小嶋夏鈴、こちらもポーランドのナタリア・チュラノウスカを下した宇都宮美咲も2日目に駒を進め、ベスト4のうち3名を日本人選手が占めた。
【女子中量級】
第7回JFKO全日本大会中量級女王の吉田優輝が、左の下突きでペースを握りドイツのアナスタシア・ミハロワに本戦4-0で勝利。順当に2日目へ駒を進めた。同ブロックに名を連ねた井上ほの花は初戦でアンナ・ビエルスカ、準々決勝でニカ・ヤコボヴィクと、全ヨーロッパ大会2022軽中量級の入賞者を軒並み連破。粘り強い組手でベスト4の切符を勝ち取った。第5回大会以来の優勝を目指す加藤小也香は、リトアニアのエヴェリナ・ビザノヴァを寄せ付けず本戦5-0で順当に準決勝に進出した。残る一枠を勝ち取ったのは、冨村日花。全ヨーロッパ大会から一本勝ちを量産してきたテオナ・ガズデリアニを手数で圧倒し、日本人のベスト4独占を確定させた。
【女子軽重量級】
準々決勝初戦で、ハンガリーのリリ・メゾと石原凜々による『リリ』対決が実現。JFKO全日本大会で軽中量級(53㎏未満)にエントリーしていたこともあり体格差が懸念された石原だが、メゾの強打を封じ込め本戦で勝利した。続く準々決勝第2試合は、網川来夢と地元のマルタ・ルボスが激突。完全アウェーの中、得意のヒザ蹴りでペースを握った網川が本戦3-0で準決勝へ駒を進めた。児玉亜瑞は、長身のミリアム・ビョルクルンドを攻めあぐね本戦0-5で涙を飲んだ。第11回世界大会で加藤小也香に土をつけているリトアニアのルタ・ブラズィオナイテは、左の中段突きを軸に梅澤彩音、イオアンナ・べリフを撃破。最終シードらしい安定感を見せ、準決勝に進出した。
【女子重量級】
地元の大声援を背に、トップシードのモニカ・ジエリンスカが好発進を決めた。小泉結菜と激突した準々決勝では、本戦終盤に突きとヒザでラッシュをかけて5-0で快勝を収めた。初戦で鈴木愛心に勝利したブルガリアのイヴァンカ・ポポヴァは、延長5-0でアガタ・ヴィニアルスカとの準々決勝を制しベスト4入り。最終延長3-2で野邑心菜との最終延長を制したリトアニアのブリジタ・グスタイタイテも準決勝進出を決めた。日本勢が次々と姿を消していく中、最後の希望となった目代結菜はカザフスタンのアズハル・アキィロワとの打ち合いを延長5-0で制し、日本人で唯一の女子重量級ベスト4進出を決めた。
【男子軽量級】
最終ゼッケンを背負ったヨーロッパ王者のアンドレイ・ズィンチェンコが、初戦となった二回戦で敗れる波乱が起こった。殊勝の白星を挙げたのは、細川昂大。最終延長に突入した勝負は細川が突きとヒザの連打で優勢となり、判定5-0で勝利を収めた。対照的に、対抗に入った河瀬惇志はジョージアのダタ・プトカラゼを相手に危なげない試合を見せ、本戦4-0でベスト8入り。澤井天心はスペインのダニエル・レドンド・カルドーゾを突きとヒザで攻め立て、本戦で完勝を収めた。四隅シードの一角だったジョージアのミンディア・ムゲラゼは、二回戦で手島一翔に0-5で敗れ、初戦で姿を消した。大坪裕希は精度の高い突きと後ろ蹴りでウクライナのタラス・ハフリレツを破り、2日目に進出。飯野駿もウクライナのボグダン・レミシュコを延長4-0で下し、準々決勝に駒を進めた。その他、準々決勝で興梠悠斗を破った地元・ポーランドのダニエル・ステルニク、カザフスタンのイェラマン・ムカシェフもベスト8入りをはたしている。
【男子中量級】
前回大会で日本が唯一優勝を逃した男子中量級は、波乱含みの展開となった。優勝候補筆頭として最終シードに陣取った後迫龍輝は、本戦でカザフスタンのアントン・ジマレフの拳を顔面に受け、思わぬ苦戦を強いられることとなった。足元がふらつく中、なんとか試合を続行したものの、本戦、延長ともに攻め手を欠く展開に。最終延長でも顔面殴打を受け、ダメージの大きさから担架での退場となってしまった。望まぬ形でベスト8に進出した後迫だが、ドクターストップにより無念の棄権が決定。全ヨーロッパ大会軽中量級を連覇中のラシャ・オズベテラシヴィリは、金岡陽大の左中段突きに苦しみ本戦0-4で敗退。優勝候補の一角である𠮷澤穂高は、ウクライナのセフェリン・パリイに得意の下段廻し蹴りでペースを握り順当に2日目に進出した。スウェーデンのアリ・ハイデルは、抱え込みと顔面殴打でそれぞれ注意を受け減点1。藤田春人のスピードにも苦しみ、準々決勝で姿を消した。その他では越智純貴、エルケブラン・ベイセムバイェフ、ダヴィット・ムスカラゼ、ミハイル・ツィクラウリが激戦を勝ち抜き準々決勝へと駒を進めている。
【男子軽重量級】
両シードが順当に準々決勝へ駒を進めた。最終ゼッケンを背負うヴァレリー・ディミトロフは、賀数拓海から左上段ヒザ蹴りで技有りを奪い本戦5-0で勝利。ベテランらしい老獪な組手で、健在ぶりをアピールした。対抗に座る多田成慶も、外国人選手を相手に真っ向勝負を展開。右下段廻し蹴りと強烈なカギ突きで地元のマレック・オドゼニアックを圧倒し、危なげない形でベスト8へ進出した。その多田とJFKO全日本大会軽重量級の頂点を争った渡辺和志も接近戦でペースを握り、ジャン・ポール・ジャコを本戦5-0で下して準々決勝へと駒を進めた。四隅の一角に名を連ねた江口雄智は、身長で15cm上回るヨナス・ロジンとの接近戦に苦しみベスト16で敗退。完全復活は、またもお預けとなってしまった。上記の4選手以外ではジャスティナス・クヴィエトカ、鳥原隆司との接戦を制したサラハト・ハサノフ、加藤大喜を最終延長で下したジュラス・ソコロヴァス、湯川智仁を本戦4-0で退けたウラジミール・アルチュシンが準々決勝に駒を進めた。
【男子重量級】
日本の大黒柱・入来建武が圧巻の組手を見せた。一回戦はオーストラリアのアレクサンダー・コツィッチを完封して本戦5-0で勝ち進み、二回戦ではブルガリアのヴァシル・ディミトロフを相手に左の下段廻し蹴りで技有りを奪取。続けざまに左の下段廻し蹴りで技有りを奪い、合わせ一本勝ち。初の世界タイトル獲得へ好発進を決めた。入来の強力なライバルとなるヨーロッパ王者のエヴェンタス・グザウスカスも、同じく圧倒的な内容で勝ち上がった。一回戦を本戦で突破すると、二回戦では落合光星を最終延長で下して勝ち上がったハンガリーのアダム・ダビッドに下段廻し蹴りで一本勝ちを収め、2日目に進出。渡辺優作は二回戦でカザフスタンのニキータ・ガラスを突きと下段蹴りで圧倒し、本戦5-0で完勝を収めた。エドガー・セシンスキーは落合奏太から上段ヒザ蹴りで一本勝ちを収め、
四隅のシード全員が順当に勝利。また、優勝候補の一角と目されていたリトアニアのパウリウス・ジマンタスから鈴木皓大が本戦3-0で金星を挙げ、準々決勝進出を決めた。その他、イリヤ・ヤコブレフを破った地元のマレック・ヴォルニー、岡田侑己との激闘を制した第12回世界大会ファイナリストのマシエ・マズール、逢坂岳から技有り勝利を収めたリトアニアのオレスタス・アバゾリウスもベスト8入りを決めた。