――5年ぶりに世界ウエイト制大会が開催されました。コーチという立場でご覧になって、どのような感想を持たれましたか。
「コロナ禍で開催できるのか、できないのかという状況の中で、選手のために開催してくださったことに、まずは感謝したいです。選手も開催されると聞いてすごくモチベーションが上がったと思いますので、結果に関わらず本当に素晴らしい大会だったと思います」
――女子は4階級中3階級を制したわけですが、この結果に関してはどのようにとらえていますか。
「重量級を獲られたのはもちろん悔しいですけど、大会全体を通じて若手選手がすごく伸びているのを感じました」
――その中でとくに印象に残ったのは、どの試合でしょうか。
「私がセコンドについたのが女子の軽重量級と中量級なんですが、その中では石原凜々選手の試合がすごく印象に残りました。体重差があってフィジカル的には不利な状況だったんですが、試合を見ていて純粋に強さを感じました」
――試合後、石原選手は胸骨をめがけての突きがポイントになったとコメントしていました。
「セコンドの立場から見ていても、その戦術が外国人選手には合っていたと思います。海外の選手は胸に突きが入ると一瞬、肩をすくめるような形で力が入る印象があったので、私も選手時代は意識して突きを強化していました。『私だったらこう闘うな』というものと、石原選手の闘い方がすごく当てはまっていたのが印象に残っています」
――2月の強化合宿などで、そのあたりの技術も選手に落とし込んでいたのでしょうか。
「そうですね。私的にも突きが一番重要だと思っていました。もちろんスタミナも重視されるんですが、外国人選手と闘う場合はとくに押し込まれて距離を詰められることを避けなければなりません。詰められると上体が浮くので、強い攻撃も出せなくなります」
――世界大会に向けても、そこがポイントになりますか。
「下突きよりも腕が伸びる突きのほうが距離も取れますし、対外国人選手という部分では闘いやすくなります。なので、まずは中段突きを強化した上での、最終延長まで闘い抜けるスタミナだと思います」
――重量級は王座が流出しました。奪還するには中段突きとスタミナは必要不可欠ということですね。
「最後まで動けるスタミナをつけておかないと、変にペース配分を意識して本戦で力を出し切ることができません。その状態で延長、再延長に入ると気持ちがついていかなくなるんです。私は気持ちとスタミナは一緒だと思っています。スタミナがあるから気持ちが強くなって、気持ちが強いからスタミナもつくと思っています。最後の踏ん張りどころを強化する意味でも、スタミナ強化が重要になるのは間違いありません」
――外国人選手と相性がよかった南原コーチのコメントだけに、選手も参考になると思います。
「あとは相手のリズムに乗らないことです。乗せてしまうと一気に勢いで持っていかれますので、自分のペースで闘える距離感が大事になります。近くなりすぎると自分の攻撃が出しにくくなってしまいますし、体格差が影響しやすくなるので、その意味でも私は必ず突きが伸びる距離に立つようにしていました」
――この5年間で外国人選手の印象は変わりましたか。
「昔よりも日本人に対して、さらに闘争心が強くなった印象がありますね」
――世界大会の第1次選抜予選となる全日本大会が近づいてきました。
「どのブロックに入っても、初戦から強い選手と闘うという印象です。レベルが高いですね」
――優勝を目指すにあたって、最も重要になるのが久保田千尋選手の対策になると思います。
「まずは久保田選手がいるからと気後れしないように、自分が絶対に優勝するという気持ちで稽古に取り組むことが重要です。あとはペースを握られてリズムを取られないようにすることですね。久保田選手は圧力がある上に最後のラッシュのスピードもあるので、それに負けないくらい体幹を鍛えてスピードで持っていかれないようにしなければなりません。そこには当然スタミナも必要になってきますので、結局のところはトータルで勝負するしかないと思います」
――その牙城を崩す一番手と言うと誰になるでしょうか。
「やはり前回大会のファイナリストである鈴木未紘選手に期待したいです。気持ちが前面に出ていますし、この1年ですごく強くなっていると感じます。ヒザ蹴りがすごく有効なので、それをしっかり使って自分の組手を貫くことができれば十分に久保田選手にも勝てるレベルにあると思います」
――16歳で世界大会準優勝の実績を持つ先輩の目から見ても、一気に世代交代を成し遂げるだけの力を持っているという印象ですか。
「そうですね、大丈夫だと思います。ここで世代交代を成し遂げるという強い気持ちで臨んでほしいですし、鈴木選手はそういう思いで大会に臨んでくると思います。負けることがものすごく嫌いな選手だと思うので、その強い気持ちがあれば大丈夫だと思います」
――新極真会としては王座奪還が至上命題となります。目代結菜選手は、いかがでしょうか。
「前回大会では胸への突きを嫌がっているように見えました。足運びがすごくうまい選手なんですが、突きをもらった時に後ろ重心になっている時があったので大事なのは体幹だと思います」
――年始から積極的にウエイトにも取り組み、その成果を見せるようにポーランドでは30㎏近く重い選手とも真っ向からの打ち合いを展開していました。
「その経験が間違いなくプラスになると思います。技術もスピードもある選手なので期待したいですね」
――世界大会まで1年を切りました。選手としては焦る気持ちもあるでしょうか。
「時間は多くないですが、しっかり稽古をしていれば焦りはないと思います。もし焦りを感じている選手がいるとすれば、もしかしたら稽古量が足りていないのかもしれません」
――選手たちにとっては本当に気の抜けない1年になりますね。
「あとはいつも言うことですけど、やっぱり最後は気持ちだと思います。最後の最後まで絶対にあきらめないという気持ちを持って闘い抜いてほしいですね」
――全日本大会でその気持ちが見えれば、世界大会での王座死守も見えてきます。
「まずは全日本大会で3年間、流出したままになっている王座を取り戻してほしいです。その上で世界大会では今回も男女ダブル優勝を成し遂げてほしいです。世界ウエイト制大会に出場することができた日本代表選手は、その経験を活かしてほしいですし、出場できなかった選手も今度は私たちが出場して絶対に優勝するという気持ちでがんばってほしいですね」
第54回全日本空手道選手権大会
2022年12月24日(土)、25日(日)
国立代々木競技場 第二体育館(JR原宿駅、千代田線明治神宮前駅)
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