この度は昇段のお許しを頂き誠にありがとうございます。
振り返れば私が空手を始めたのは、六十一歳になった時でした。
子供達も大人になり友人たちもそろそろ定年を迎える歳となり、自分の体の衰えも感じ始めた頃でした。
これで良いのか、これで終ってしまって良いのだろうかと思い、何か出来ることはないだろうかと考えていた矢先、その頃通っていたスポーツジムの新極真の空手教室に目が留まりました。
その時何故かやってみたいという衝動に駆られました。
自分の老化に逆らってみたかったのかも知れません。
見学をさせて頂き、多田先生に「お幾つですか」と訊ねられ「六十一歳です」と申し上げると「普通は止める歳ですね。でもまあ、やってみたらどうですか」とおっしゃって頂きました。
今から思えば、先生も私の歳を聞きすぐに止めるだろうなとお思いだったのだと思います。
私自身もどこまでやれるか自信があった訳ではありませんでしたが、ともかく頑張ってみようと思いました。
多田先生は私の長男と同い年。
空手の右も左も分からぬ私に優しく丁寧なご指導を頂き、根気よく導いて下さいました。
衝動的に入った空手道でしたが、私はどんどんと深く魅入られるように稽古に通うようになりました。
多田先生は、級が上がるとそれに応じて厳しくご指導下さいました。
帯にふさわしい技と心を身につけるよう、ご指導下さいました。
初心に多田先生に出会えたことは、私にとっての幸運でありました。
心より感謝致しております。
多田先生が西大阪支部に戻られてからは、八崎先生のご指導を受けました。
型に精通された八崎先生にお教えを受け、茶帯を頂き稽古に精進すべく過ごしていた矢先、思いもかけず膀胱癌が見つかりました。
幸い手術も成功し仕事にも戻れたのですが、空手は諦めようかと思いました。
家族も心配し、体第一にして欲しいと頼まれました。
しかし私の心にはどこか諦めきれない部分があったのでしょう。
主治医に「先生、私は空手をしているのですがもう止めなければいけないでしょうか?」と聞いてみました。
隣にいた妻はとんでもないという顔をしていましたが、主治医の答は意外にも「別にかまいませんよ。続けられたら良いですよ」というものでした。
主治医のお墨付きを頂いたので、家族にも納得して貰い続けることにしました。
それでも治療の期間は稽古も休まなければなりませんでした。
歳も歳だし昇段試験はもう諦めようと思いかけていました。
しかしそんな時、八崎先生は「奧山さん、今諦めたらきっと後悔しますよ」と強く励まして下さいました。
心より感謝致しております。
お陰様で何とか一級を頂きました。
もうこれでいい、これ以上望むのは贅沢だと自分に言い聞かせようと思いました。
しかし八崎先生や前田師範の「諦めずに精進せよ」との暖かいご指導とお言葉に、七十才を迎えた私の闘志が燃え上がりました。
七十一歳という歳で黒帯を頂けたのはひとえに、前田師範、多田先生、八崎先生、と心技ともに誠に優れた先生方とのお出合いがあったればこそであります。
私がここまで進む力となり、この度の昇段のお許しに繋がったこの暖かいご指導に、心より感謝申し上げる次第であります。
また、私を支え応援して下さった道場仲間、北大阪支部の皆様に深く感謝申し上げます。
これからも老体にむち打ちできる限り、行けるところまで頑張り、生涯現役を志したいと願っております。
どうぞご指導、ご支援の程を宜しくお願い申し上げます。
大阪北支部
支部長/責任者:前田政利
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