3月15日~17日、第4回U-22強化合宿兼JFKO大会・KCC強化合宿が、山梨県の富士緑の休暇村で開催された。男子主将の後迫龍輝、女子主将の目代結菜といったU-22選手だけではなく、オーバーエイジ枠でKCC(空手チャンピオン オブ チャンピオンズ)への出場が決まっている第13回世界大会5位の岡田侑己、同8位の渡辺優作といったトップ選手も顔を揃え、101名が富士の麓に集結。3日間の過酷な稽古に取り組んだ。
【初日】
2014年から2年に一度開催されてきたU-22強化合宿だが、コロナ禍の期間は中止を余儀なくされたため、これが6年ぶりの開催となった。冒頭の結団式では、3月14日にご逝去された長崎支部の山田政彦師範に追悼の意を表し、黙とうが捧げられた。
続いて選手強化委員長の三好一男副代表が「昨日は我々の仲間である山田師範が亡くなりました。山田師範はブラジルに極真を広めるために単身乗り込んでいって、世界に普及する先兵としてがんばられた方です。新極真はひとつのファミリーですから、いなくなってしまうのは本当に寂しいです。みなさんは今日からものすごく厳しい稽古をします。左の胸についている新極真会の4文字に命をかけて、どんな人と闘っても負けない。そういう気持ちを持って稽古してもらいたいと思います」とあいさつを行なった。
選手強化委員、コーチ、男女主将紹介の後は、選手強化副委員長の奥村幸一師範が「世界大会は日本が勝ちましたが、KCCやWFKOに勝ってこそ本当の最強です。WFKO世界大会は推薦がないので、総力を挙げてKCCとWFKO、ふたつの日本代表を新極真会が独占して、全階級制覇を成し遂げてください」と、参加者に檄を飛ばした。
稽古では三好副代表が先導し、大山倍達総裁直伝の準備運動、基本稽古をみっちりと行なった。続く組手稽古では男女とも階級別に分かれ、1分10ラウンドをこなした。
次に選手強化委員の山田一仁支部長が選手を集め、突きが単調にならないためのセミナーを行なった。ポイントはダブル、緩急、フェイントの3つ。実演を交えながらアドバイスを送った。ふたたび1分10ラウンドの組手を2セット行なった後、山田支部長が下突きのカウンターのテクニックを伝授。選手は2人1組となって教わったテクニックを実践し、1分10ラウンドの組手を行ない組手稽古が終了。最後は2人1組となり、腹筋、背筋をそれぞれ3分ずつ行なって回数を競った。
ナイトミーティングでは、奥村師範がU-22強化合宿の成り立ちの経緯を振り返り、JFKO全日本大会への全階級制覇へ向けてあらためて奮起を促した。続いて4名の選手強化委員・コーチから参加者にメッセージが送られた。
「JFKO全日本大会は各階級3人ずつしか日本代表として選抜されません。この中のメンバーが必ず行かなければいけないと思います。稽古で苦しい時間があると思いますが、足を止めない、体も切っていかないといけない、手も出さないといけない。そこで手を抜いてしまうようでは厳しい選抜戦を勝ち抜けません。誰ひとり自分に負けることなく、こなさずにやりきってください」(島本雄二支部長)
「女子は正直JFKO全日本大会で新極真の優勝者が少ない状況です。JFKOの前に開催されていた全日本ウエイト制大会ではほとんど新極真の選手が優勝していて、他流派から強い選手が来て勝つこともありましたが、そうしたら次の大会は絶対に負けないという気持ちで鬼気迫る闘いを繰り広げて王座奪還していました。今はどちらかと言うと他流派の選手に押されている状況なので、JFKO、WFKOは必ず新極真の女子がチャンピオンになって、新極真の女子があこがれられる時代を取り戻してほしいです」(将口恵美コーチ)
「今日の組手稽古を見ていて、ライトにやりすぎている選手もいるなと感じました。とくに相手が日本代表経験者だったりすると気後れして軽くやってしまう選手もいると思いますが、こういうチャンスはなかなかないのでガンガン攻めください。自分の実力を試して、それを持ち帰って稽古するのが強くなるための近道だと思います」(入来建武コーチ)
「最近の女子は他流派を含め突き主体の選手が多いですが、新極真の選手は相手の組手に付き合いすぎているなと感じます。自分の得意な分野を伸ばして、得意なところで闘えるようにもっと意識を高めて稽古してほしいと思います」(山本小也香コーチ)
【2日目】
6時からの早朝稽古では、ランニング、体幹トレーニングに続き、男女に分かれてドッジボールのようにボール投げが行なわれ、当てられた選手は拳立て10回を行なった。
午前稽古では女子選手へ向け、山本小也香コーチが下半身を上半身と連動させるためのセミナーを行ない、反復横跳びなどステップワークに活きるさまざまな方法を実践した。続いて砂川久美子コーチが突きを打つ際に片足に体重を乗せるコツを伝授。片足で立ち、床に置いたペットボトルを持って持ち上げるトレーニング法を指導した。
男子は島本雄二コーチが蹴った後のポジショニングを解説。下段を蹴って最短で入って攻撃へつなぐ。そこからの手のフォローなど世界チャンピオンのテクニックを惜しげもなく伝授した。
男女ともに教わった技術を組手で実践し、午前稽古が終了した。
午後稽古からは前日に山田師範の通夜に出席していた緑健児代表、九州地区の支部長が合流。緑代表は「みなさんはそれぞれの道場の師範やご両親のサポートがあってこそ今があると思います。当たり前だと思わないで、感謝の気持ちを持ってください。山田師範も天国からみなさんのがんばりを見守っていると思います。5月のJFKO全日本大会は来年のWFKO世界大会の選抜戦なので、ぜひ1位~3位まで新極真会が独占してほしいと思います」と語りかけた。
基本稽古では合宿の主力選手や我こそはという選手、特別推薦で参加した中学生の3名を前に呼び込み、廻し蹴り200本を行なった。
続いて谷川光支部長が男子選手へセミナーを行なった。腰の重さと安定感をつくるため、2人1組になって相手と手のひらを合わせて押し合う稽古法を伝授した。
女子は将口恵美コーチが突きの圧力対策の指導を行なった。こちらも2人1組となり、蹴りを出す瞬間に後ろから帯を引っ張ってバランスを崩させ、圧力をかけられても蹴りを出す下半身の強さを身につけることの重要性を説いた。
男女ともに2分3ラウンドの組手を行なっていると、第1回全日本大会チャンピオンの山崎照朝師範が東京中日スポーツの取材で訪れ、「やる以上は1位を目指してください。優勝するかしないで人生が変わります。2位だから、3位だからいいや、入賞したからいいやと思ったらそこで負けです。1位になればその人の名前が永久に刻まれます」とメッセージを送り突きのさばき方も伝授した。
ふたたび組手に戻って数セットを行ない、休憩時間に入ると緑代表が選手を集め、「マジメに強くなろうと思ってガンガンいく人に対して、『何だ? この人は張り切って』という空気を少し感じます。そういう意識を持つようでは絶対にダメです。全員がJFKO全日本は新極真が上位を占めるぞと思えば、お互いガンガンやるわけです。みんな覚悟を持って、もっと厳しくやってください」と檄を飛ばした。
再開された組手では気合いの入った激しい打ち合いが各所で展開され、過酷な組手を乗り切った。続いて谷川支部長が仕切る形で補強が行なわれた。2人1組が向かい合い、拳立ての体勢のままじゃんけんをして勝った選手は10回、負けた選手は20回拳立てを行なうルール。これを1分3セット続けた。
最後は澤井天心が登壇し、澤井が普段行なっている前後に移動するジャンピングスクワットを50回5セット実践し、参加者は体をいじめ抜いた。
夜には大阪から内藤隆富師範が駆けつけ、ドーピング講習会が行なわれた。選手からも質問が飛ぶなど、有意義な時間を過ごした。
【最終日】
早朝稽古は島本雄二支部長が先導する形でストレッチを行ない、続いて数名ずつのチームとなってダッシュやクモ歩きなどチーム別に競争を行なった。最下位となったチームは拳立て10回が課せられた。
合宿のクライマックスとなる午前稽古では、正拳中段突き、廻し蹴り200本の後は組手に入った。こちらは実戦と同じように、男子が3分、2分、2分、女子は2分、2分、2分をワンセットとしてグループごとに数セットの組手で汗を流した。
最後はジャンピングスクワット100回を2セット行ない、3日間の過酷な稽古が終了した。
解散式では緑代表、三好副代表が総評を述べた。
「みんなとても達成感のある顔をしています。昨日より今日の組手はすごく激しかったし気合いも入っていたと思います。試合前に厳しい稽古をやるのは大変ですが、試合に出ている以上避けることはできません。現役を終えたコーチ陣も現役時代に悔いのない稽古をしてきた選手たちです。みんなも必ず引退する時が来ますが、その時に振り返って悔いのない現役生活だったと思えるようにしてください」(緑代表)
「本当によくがんばったと思います。みなさんの左胸についている『新極真会』の4文字に命をかけて、どんなに苦しくてもがんばれるようにしてください。私も大山総裁から空手着をいただいて、高知に行きました。どんなにつらくても組織に恥をかかせられない、師匠に恥をかかせられないと思っていました。みなさんも道場の先生や緑代表に恥をかかせないように、どんなに苦しくてもがんばってもらいたいと思います」(三好副代表)
続いて、男女主将の後迫龍輝、目代結菜、KCC日本代表の岡田侑己、渡辺優作、鈴木未紘、網川来夢が登壇し、選手を代表してあいさつを行なった。
「JFKO全日本大会は全階級完全制覇することが一番の恩返しだと思っているので、明日から道場に帰って感謝の気持ちを持って闘っていきたいと思います」(後迫)
「今回の合宿は体の使い方や姿勢など、たくさんのことを学ばせていただきました。これを自分の道場に持ち帰り、5月のJFKOは必ず優勝してWFKOにつなげたいと思います」(目代)
「私たちは7月にKCCを控えていますが、まずは5月のJFKO大会で全階級完全制覇を成し遂げ、その勢いで7月も男女ともに日本が優勝できるように全力を尽くします」(岡田)
「全国各地から集まった精鋭との稽古をともに乗り越えて得た経験を活かし、必ず道場に持ち帰って5月と7月は必ず優勝して上位独占、日本の王座死守に貢献します」(渡辺)
「3日間たくさんのアドバイスをいただき、自分自身新たな発見や課題も見つかりました。これを持ち帰って試合まで死ぬ気で稽古をします」(鈴木)
「自分に足りない部分が明確にわかったので、これからしっかり課題に向き合っていきます。JFKOは他流派の選手に王座を渡さないように、KCCでは海外に王座を渡さないように日本代表の誇りを持ってがんばります」(網川)