――世界大会が迫ってきましたが、ケガもなく順調にきていますか。
「足を骨折して以降は、大きなケガもなく順調です。大会には万全の状態で臨めると思います」
――稽古では、しっかり追い込めていたようですね。
「充実した稽古ができていまして、もう体がパンク寸前というくらいまで追い込んでいます。これまでの空手人生で間違いなく一番の稽古ができています」
――強化ポイントは?
「テーマを絞るというよりトータル的にレベルアップするように心がけています。この疲れが抜けたらどれだけの動きができるのかと、今は楽しみな気持ちのほうが大きいですね」
――対外国人選手では、やはりスピードがテーマになると思います。
「そうですね。もらわずに効かせるというのがテーマで、そこはもうディフェンスというものではなく指一本触らせずに倒すというのが理想です。究極のところまで突き詰めるという気持ちで、今回は稽古に臨んでいます」
――指一本触れさせない、というのは確かに究極のテーマですね。
「もちろん究極の理想までは程遠いですけど、日に日にレベルアップしている実感はあります。指一本すら触れさせない、それくらいの意識を持たないと世界大会では勝てないです。日本人だけではなく外国人選手のレベルアップも凄いですから」
――対外国人という部分に関して、特別な意識はないですか。
「外国人選手だから意識するということは、もうないですね。苦手意識もないですし、逆に対戦が楽しみというか王座を死守するという強い気持ちでいます」
――ユース世代が中心となる世界大会です。エースとしての意識の高さが伝わってきます。
「若い選手が多いですから、勢いという面では過去最高の日本選手団だと思います。ただ勢いだけでは勝てませんから、自分がしっかりキャプテンとして柱になって引っ張っていかなければいけないと思っています。日本代表の強化合宿を経て、さらにその気持ちが強くなりました」
――歴代のユース主将が、こぞって代表に選ばれていますね。
「だからこそ本当に負けられないです。自分たちの代で伝統を途切れさせるわけにはいかないですから。王座死守は絶対です。先輩たちが築いてきた伝統を死守するという緊張感は、みんな持っていると思います。あとは、その気持ちを試合で出せるか。最後は技術云々ではなく、精神力の勝負になります」
――トーナメント表を見て、感じたことはありましたか。
「1番のヴァレリー選手を筆頭に、強い選手が各ブロックに入っています。ただ反対のブロックからは兄か(大下)郁真が上がってくると思うので、自分もしっかり勝ち上がって決勝で対戦したいですね」
――マークする選手というのは?
「誰が相手でも優勝するしかないと、トーナメント表を初めて見た瞬間に思いました。とくにマークする選手というのはいないですし、誰が相手でも勝ち上がるということしか考えていません」
――ワールドカップでは日本勢の苦戦が続いているので、なおさら世界大会は重要なものとなります。
「ワールドカップでは情けない負け方をしてしまったので、ここで本当に自分たちでもできるということを示さないといけないですね。それも先輩たちに頼るのではなく、自分たちの手で」
――前職を辞め、今年4月から空手一本の生活になりました。大きな変化を感じているんじゃないですか。
「はい。ほかに仕事を持ちながらだと、ここまで稽古はできなかったですから。稽古ができない不安というのは、試合の中で必ず隙になります。世界大会にはすべての面で、万全の状態で臨めると思っています」
――お子さんも誕生するなど、前回の世界大会とは違いますね。
「苦しい稽古をしている時でも『子どもが見ているぞ』と言われると、自然と体が動きます。子どもの力は大きいですね。それだけに絶対勝たないといけないです。今回勝てなかったら家族にも申し訳ないですから。空手一本の生活をさせてもらうようになって、自分のわがままを通させてもらっているので」
――様々なものを背負っての世界大会になりますね。
「プレッシャーもありますけど、絶対に王座を守るという気持ちです。ただ試合では守るというより攻める気持ちのほうが強いです。挑戦者という気持ちでもないので言葉で表現するのは難しいんですけど、必ず王座を獲るという気持ちですね。その結果、王座死守という形になればベストです」
――あらためて兄弟で出場する世界大会という舞台に対する覚悟を聞かせてください。
「今回は、(大下)郁真もがんばって結果を出して出場することになりました。この三人で世界大会に出場できることを嬉しく思いますし、兄と決勝戦で闘うという夢を叶えたいです」
――今回の世界大会には武道というテーマが掲げられました。雄二選手にとって武道とは?
「心の部分ですよね。ほかの競技と何が違うかといえば、それは心の部分です。心技体の中でも、心の修行をしっかりやっていかないと、ただ試合で勝つというだけでは意味はありません。すべての人に感謝する心を持って、その上で自分は今、選手としてやっていますので、しっかり大会で勝つということが大事になってくると思います」
――心を磨く道ですね。
「心が弱くて試合で強い、という選手はいないですから。そして、その心が強いというのが日本選手の強さだと思います。世界大会は体が大きな選手もたくさん出場しますけど、気持ちを強く持って闘おうと思っています」
――本当の意味でエースの座を懸けた大会になりますね。
「必ず世界チャンピオンになる。それ以外にはないですね。どんなことがあっても王座は死守しなければいけないですから、自分が絶対に優勝します」
島本雄二「世界チャンピオンになる。それ以外にはないです」
2015.10.24
メディア