――全日本大会が約1週間後に迫ってきました。現在の心境はいかがですか。
「世界大会の選抜戦なので緊張感がありますが、楽しみな気持ちのほうが大きいです。試合に対してはいつも楽しみな気持ちがあります」
――全日本大会で3連覇を達成して追われる立場ですが、それでも楽しみな気持ちがあるのですね。
「試合でどこまで理想の組手に近づくことができるかが楽しみで、それがモチベーションになっています。稽古でやってきたことを100%出すことは難しいですが、だからこそ挑戦する価値があると思っています」
――昨年の第53回全日本大会では、ご自身の中でベストな闘いができましたか。
「去年の自分で考えると、ベストに近いものが出せたかもしれません。ただ、1年間稽古を積んできたので、去年と同じ組手ができれば満足ということはありません。今は自分がどうトーナメントを勝ち上がるか、どうしたら最高のパフォーマンスを出すことができるのかを、しっかりイメージするようにしています」
――今大会で目指す理想の闘いはどのようなものですか?
「いつも大前提としていることではありますが、圧倒的な強さを見せて勝ちたいと思っています。対戦相手のシミュレーションを徹底しつつ、稽古で取り組んできたことを活かして勝ち上がっていきたいです」
――とくに意識する選手はいますか。
「前回大会の決勝で闘った鈴木未紘選手はもちろん、同じブロックに入った加藤小也香選手、目代結菜選手、野邑心菜選手をとくに意識しています。逆ブロックには第7回JFKO全日本大会を制した渡辺小春選手もいますし、気が抜けません」
――いずれも過去に勝利した選手ですが、それでも対策を欠かさないのはなぜなのでしょうか。
「一度勝ったからと言って気を抜くことはできません。とくに加藤選手には昔はなかなか勝てなくて、最近やっと勝つことができるようになりました。油断できるような選手はひとりもいないので、隙を与えたら足をすくわれると思っています」
――周囲が久保田選手を徹底マークする中、そのような姿勢があるからこそ勝ち続けられるのですね。
「自分は器用なタイプではないので、準備には最善を尽くしたいと思っています。また、これは(久保田勝利)師範の教えなのですが、試合まで日数がある時は相手がすごく強いととらえて、勝つための方法を徹底的に考えるようにしています。ただ、試合が近づいてきたら、自分は絶対に相手より強いとポジティブな思考に切り替えます。気持ちの切り替えをしっかりして、精神状態をベストに持っていくようにしています」
――先ほどお話に出ましたが、やはり鈴木選手の存在は大きいですか。
「はい。前回大会では最終延長までもつれましたし、大会後も鈴木選手は多くの試合をこなして、力をつけていると思います。かなり勢いを感じるので、波に乗らせてはいけないと思いますね。稽古したことを実戦で試行錯誤して、成長を続ける鈴木選手の姿勢はすごいと思います。私も以前は年間で多くの試合に出場していましたが、今は多くの試合に出ることが難しい状況です。ただ、その中でも自分のスタイルでしっかりと勝ち切りたいと思います」
――前回大会3位かつ、同門の水谷恋選手はどのような存在ですか。
「水谷選手とはつねに一緒に闘っている感覚があります。ふたりで勝ち上がって大会を盛り上げて、久保田道場の強さを見せていきたいです。決勝で水谷選手と闘って、ワンツーフィニッシュで世界大会に出場できたら最高の形だと思います」
――昨年の全日本大会の後、今年5月の第7回JFKO全日本大会には軽重量級で出場しました。
「経験したことがない状況を試したくて、軽重量級にエントリーしました。少し体重を落としたので動きやすい感覚がありましたが、パワーが落ちていると感じた部分もありました。今は無理に増量や減量をするわけではなく、普段通りの食事を摂ってノーマルなウエイトに戻しました。過度な食事管理はストレスになると感じたので、今は無理のない範囲でコンディションをつくっています」
――今大会は、来年の第13回世界大会の日本代表選抜戦でもあります。
「代表権を獲らなければというプレッシャーがないと言えば嘘になりますが、今回の大会だけが特別ではないと思っています。というのも、今まで負けていいと思った試合はひとつもありませんでした。目の前の試合に全力で臨んで、その結果が代表権獲得につながればいいと思います」
――2019年の第12回世界大会に出場した際は、準々決勝で菊川結衣選手に敗北を喫しました。
「当時を思い出すだけで、悔しさが込み上げてきます。普段の試合も緊張しますが、あの時は緊張しすぎて頭が真っ白になっていました。振り返ると、稽古の量や質も甘い部分があったと思います。ただ、あの時の悔しさがあったからこそ、今がんばることができていると感じています」
――第12回世界大会に出場する以前から、新極真会の世界大会を意識していましたか。
「はい。以前に第8回世界大会のビデオを見た時から、鈴木国博師範の試合が脳裏に焼きついていました。世界大会と言えば『新極真会の世界大会』だと思っているので、昔からかなり意識していた舞台です」
――世界への再挑戦のためにも、ぜひ今大会を獲りたいところですね。
「はい。世界大会に向けて、全日本大会の2位として行くつもりはありません。目標は圧倒的な強さで優勝することです。日本最強として世界に挑みたいと思います」
――9月の第7回世界ウエイト制大会はご覧になりましたか。
「気になったのですが、じつはわざと見ないようにしていました。今は全日本大会があるので、そこでしっかり世界大会出場を決めて、それからポーランドの動画を見たいです」
――今回は史上初の全日本大会4連覇もかかっています。
「連覇できていることは本当に光栄なのですが、優勝した記憶は自分の中で一度リセットするようにしています。つねに自分は挑戦者だと思って、目の前の試合に全神経を集中させることを大事にしています。連覇という実績は、その結果としてついてくるものだと思っています」
――周囲に対策されながらも絶対女王であり続けるには、久保田選手も進化を続ける必要がありますよね。
「はい。ただ、とくに変わったことをするわけではなくて、基本をコツコツと積み上げることを意識しています。1年、2年、3年と努力を積み重ねて、自分の土台を強固にしていきたいです」
――昨年よりもさらに強くなった久保田選手の姿が見られそうですね。
「圧倒的な強さを見せて勝つことはもちろん、納得のいく内容の試合をした上で、絶対に私が優勝します」
第54回全日本空手道選手権大会
2022年12月24日(土)、25日(日)
国立代々木競技場 第二体育館(JR原宿駅、千代田線明治神宮前駅)
大会ページ
チケットぴあ
くぼた・ちひろ(久保田道場)
1996年10月30日生まれ、26歳
愛知県出身。161cm、65kg
●第50・52・53回全日本大会優勝
●第1回JFKO国際大会重量級優勝
●第1・4・5回JFKO全日本大会重量級優勝
●第7回JFKO全日本大会軽重量級優勝